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 すると鳳城もまた、鳩を見ていて――

(……あ)

 鳳城が浮かべたのは、申し訳なさそうな、疲れたような苦笑だ。
 どうやらこの鳳城という人物も、手のかかる友人に振り回される苦労人らしい。
 何だか親近感を抱いてしまい同じく苦笑で返した鳩は、慌ててそんな場合ではないと、結斗達に視線を戻した。

 少し目を離していた間に、テーブルや椅子をなぎ倒しながらヒートアップしているようだが、未だどちらも一発も入れられていないようだ。
 鞍眞も炎は封印しておくことにしたようで、彼等の戦いは肉弾戦となっていた。

(……どうすっかな)

 このまま決着がつくまで待つのも手だが、その場合かなりの被害と厳罰を覚悟しなければならないだろう。
 今すぐ止めさせるのが一番だが、さすがにあの場に入って行くことは鳩にはできない。
 ――しかしだ。
 止めることなら、できる。

「……薺さん」

 薺にひそりと耳打ちした鳩は薺の肯定を合図に、『それ』を結斗達の元へと投下した。


「「――!?」」


 ――煙幕である。
 突然足元で弾けた玉が撒き散らす白い煙に、驚いた結斗と鞍眞の攻撃手は止まる。
 その隙を狙って鳩は結斗の腕を掴み、食堂の出口目指して駆け出した。




***




「――ゴホッ、んだよ! 能力か!?」
「いや、違うよ」

 最も煙の多い中心部で咽せる鞍眞に、歩み寄った冬夜は「煙幕だ」と答えてやる。

「…煙幕? なんつー古典的な」
「けれど賢い方法だ。なんの違反にもならないし、目くらましには十分だろう?」

 冬夜の言葉にはっと辺りを見渡す鞍眞だが、そこには戸惑う生徒達がいるだけで間崎や浅霧の姿はない。まんまと逃げられたことを知った鞍眞が、ちっと舌打ちをした。

「いいとこだったってぇのにっ」
「――鞍眞」

 苛立たしげに足元に転がっていた椅子を蹴り上げる鞍眞に、冬夜は静かに呼びかける。
 そして、

「悪いが、『不問』にはしないよ。全て君に責任を取ってもらう」

 そう、淡々と告げた。

 予想通り鞍眞が「ああ?」と目を眇めて睨んでくるが、今の冬夜には、全く気にならない。
 とびきりの笑顔でにこりと笑って、言ってやった。

「――僕は怒っているんだ。覚悟はいいよね?」




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