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「……鞍眞、くれぐれも騒ぎになるような真似は、」
「ああ? テメェの話が済むまでは待ってやっただろ。これ以上俺様に指図すんじゃねーよ」

 そう言って鳳城を押しのける鞍眞に、間近で見ると益々、彼が発する威圧感が強者のそれであることを感じさせられる。
 彼の――『鞍眞』の系統能力である炎のように、彼自身の気性も激しく、そして見るものを惹きつける輝きを放っているようだ。
 ――と。

「テメェが浅霧か。新入早々やらかしたっつーからちょっとは骨のある野郎かと思ったが――湿気た面したガキじゃねぇか」

 ガシャンッと。
 鞍眞がテーブルを足蹴した所為で、食器が揺れて音を立てた。
 明らかに攻撃的な鞍眞の態度に呆気に取られる鳩の隣で、「鞍眞っ」と鳳城の制止する声が聞こえたが、それは鞍眞を止めるには至らないようだ。

「黙ってないでなんとか言えよコラ。それとも怖じ気づいて声も出ねぇか」

 再びガシャンと食器が音を立てるが、それでも薺はただじっと見返すだけだった。
 おそらく、だ。
 薺の落ち着いた態度に、鳩は鞍眞の思惑を悟って得心する。
 鞍眞は態と薺を煽っているのだろう。薺が怒り、手を出してくるのを待っているのだ。戦いたいがゆえに。
 現に、全く動じない薺の様子に、鞍眞は酷くつまらなさそうに「ちっ」と舌打ちして、テーブルから足を退けた――のだが。

「まさか『浅霧』がこんな腰抜けとは――ああ違うな。初日から可愛いの二人侍らしてるただの色ボケか」
「……聞き捨てならねぇんだけど」

 ガシャンと。
 それまで食事に勤しんでいた結斗が、いきなり、手にしていたフォークを乱暴に机に置いた。


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