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 騒がしさの原因は、そろそろ聞き慣れつつある男子生徒の黄色い歓声だ。
 それは入り口付近から発生しているようで、つられて目を向けた鳩の瞳には二人の生徒の姿が映った。
 一人は――鞍眞嵐。
 彼が見せた演出もさることながら、その派手な橙色の髪と端正な容姿の存在感は、見間違えようがないものだ。
 もう一人は知らない生徒だった。
 少し茶色がかった髪に中性的な容貌の、鞍眞とは対称的にきっちりと制服を着こなした気品を感じさせる人物である。ただその胸元で結ばれたネクタイから、彼が三年生であることはわかった。
 学年によってネクタイのラインの色が異なり、鳩達一年生なら白色、二年生なら緑色、三年生ならば赤色であるということは、先程のクラスでの学園説明で聞いた話だった。
 因みに鞍眞はネクタイをしていないためわからないが(入学式の時も制服を乱したままだった)、生徒会長と言うからには彼も三年生なのだろう。

 しばらく目を離せぬまま見続けていた鳩だったが、何となく――何となくだ。
 嫌な予感がして、視線をさっと日替わりセットへと戻し食事を続けようとしたのだが、その寸前。
 哀しくも、気品ある生徒の視線がぴたりと、鳩達が座るテーブル席の方へ向いたのを目にしてしまった。

「――浅霧薺君、少しいいかな」

 ――案の定である。
 側まで来て声をかけてきたのは、その見知らぬ生徒だった。


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