間崎――それも王冠指定の一族の内の一つだ。
　間崎結斗、彼はその一族の直系に当たる。
　現当主である間崎凪斗の一人息子である彼は、数名いる次期当主候補の中の筆頭に立っており、彼が次期当主となることは、間崎一族内では暗黙の了解とされていることだった。
　鳩――間崎鳩、とこれからの学園生活で名乗ることになる鳩だが、鳩と間崎一族の間に血の繋がりはない。鳩は、十年前現当主間崎凪斗に拾われた子供だった。
　鳩には当時の記憶などほとんど残っていないため事の経緯はわからないが、聞くところによると発見された時、鳩は身よりもなく記憶もない状態だったらしい。そんな幼い鳩を偶然発見した間崎凪斗は、息子と同じような年頃の鳩を不憫に思い育ててくれたのである。
　そして鳩と結斗は、同じ子供同士自然と一緒に遊ぶようになり、信頼し合い、立場上主従の関係にあるのだった。
　ただ主従といっても鳩は幼い頃からの態度を変えるつもりはないし、結斗もそんなことは望んでいない。
　偶に――偶にだ。とりとめのない不安に襲われた時に、結斗が主従の関係を仄めかすことがあるだけである。絶対的な繋がりを、確認するかのように。