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「――いや、赤来には割り込みの仕事に当たってもらっている」
「割り込み? んだそれ」
「新入生の間で諍いが起きたんだ。それも魔導を行使してのね。損傷が激しくなりそうだから修復役にと、夏帆谷先生が呼びに来たんだよ」
「へぇ、おもしろそうなことしてんな。そいつらの名前は? 王冠の奴か?」

 途端、ニヤニヤとして食いついてくる鞍眞に、面倒なことにならなければいいが、と僅かな懸念を抱きつつ、冬夜は答える。

「……十埜尚樹と言う生徒が、浅霧薺に突っかかったそうだ」

 冬夜が聞いた情報はここまでだ。
 だが、彼等の能力を知っている冬夜には、どんな結果になるのかなど概ね想像がつくことだった。
 やっぱ王冠かよ、と『浅霧』の名に反応を見せる鞍眞を横目で見ながら、冬夜はすっと立ち上がり、椅子にひっかけてあった制服の上着に腕を通す。

「ああ? どっかいくのか?」
「……ああ、食堂にね。その『十埜』は『鳳城』の管轄の者なんだ。鳳城家の代表としてこの学園に通っている以上、一言、浅霧薺に詫びる必要があるだろう」
「かてぇ! テメェは相変わらず頭かてぇな」
「……うるさいな」

 「君が奔放過ぎるんだ」と言い捨てて部屋を出ようとした冬夜だったが、ノブに手をかけたところで鞍眞に、

「――待てよ」

 と呼び止められた。
 そして案の定、鞍眞が続けたのは「俺も行くぜ」という言葉で。

 愉しげにソファーから立ち上がった彼に、冬夜が内心頭を抱えたのは言うまでもないだろう。



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