「――全く、君が大人しく職務を果たすとは思っていなかったけど、魔導を使用するのはやりすぎだよ」
生徒会室のソファーにどかりと腰かける鞍眞嵐に、冬夜は盛大なため息を吐いた後、呆れ口調で小言を並べ立てた。
鬱陶しがられることはわかり切っていたが、自分の他に注意するような者がいないため仕方なくだ。
「第一、許可を取っていなかったんだろう?」
彼が新入生の入学式で仕出かしたことを知ったのはつい先程のことである。何食わぬ顔をして戻ってきた彼と共に――いや、連行してきたのだろう教師に聞かされたところだった。
「うっせぇなぁ。叉木坂理事長の許可があんに決まってんだろ」
「僕は『今』の話をしてるんだ。僕にまで見え透いた嘘を吐くのはやめてもらえないか」
『叉木坂理事長の許可』がある。
彼はそう言って教師達をかわしてきたのだろう。だが。
冬夜にはそれがまだ、『予定』であることがわかっていた。
「んなもん叉木坂に言えば簡単に許可降りんじゃねぇか。同じだろ」
「…はぁ、同じじゃないよ。何のために規則があると思ってるんだ」
今彼が口にした『叉木坂』とは理事長のことではなく、この学園に通う二年生で、生徒会執行部の書記でもある叉木坂春のことだ。
つまり鞍眞の言い分はこうである。
魔導の使用許可は取っていないが、叉木坂春に言えば理事長の許可は簡単に得られるのだから、先か後かなど、大した問題じゃないだろうと。