58

***




「あの機械で注文して、カウンターに取りに行けばいいんだな。すっげぇ広〜」
「それに意外と綺麗だな」

 さすが千人余りもの人数を受け入れられるだけあって、食堂は広大だった。
 カウンターや注文する場所に人だかりはできているが、分配されるように台数も用意されており回転も速いため、混雑という程でもないだろう。
 学生の食堂というと狭くてシンプルな長机があって白基調で……というイメージがあったのだが、小綺麗なテーブルや椅子が揃えられ、オシャレなカフェのような雰囲気のある食堂だった。
 さすがは国家最大の学園である。
 敷地内に足を踏み入れた時から思っていたことだが、郁奈宮学園は調度品一つとっても金のかかっていそうな、内装も外観も優美な学園だ。王冠は元より財閥の子息も多く通っているため、典型的な金持ち学校と言えるだろう。

 ぐるり、と周囲を見渡した鳩はふとあることに気がついた。
 今食堂にいる生徒のほとんどは二、三年生のようで、休日である彼等は私服姿の者が大半だ。
 そんな中、皆一様にどこかそわそわとしながらしきりに辺りを見渡しているのは――おそらく、彼等が食堂にきた目的が『新入生を見たいため』だからだろう。
 入学式と学園説明を終えた新入生が向かう場所は、概ね食堂である。
 食堂が食事も取りつつゆっくりと新入生を観察できる、うってつけの場所であることは衆知の事実のようだった。


<< >>
maintop


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -