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だが病人と言うほどではないそれに「んーちょっと熱いかな」と告げて額を離した鳩は――突然。
まるで、沸騰間近のヤカンのようにカタカタと震え出した結斗に、ギョッと目を見張った。
「――お、」
「…お?」
「おっ、おまえの所為だよバカっっ!!」
「へ?」
きょとんと。
いきなり結斗に怒鳴らた鳩は訳がわからず、目を瞬かせるしかない。
――『おまえの所為』とは、一体なんのことなのか。全く身に覚えがなかった。
「おまっ、おまえがっ! 急にくくくっついて、くっからっ」
「ゆ、結さん?」
なにやら言いながら詰め寄ってくる結斗だが、どもっているし早口だし、何を言っているのかはさっぱりだ。
落ち着け、と告げようとした鳩だったが、それより早く、他の人物によって結斗の勢いは遮られた。
「へぇ〜〜、君達はそういう感じなんだ」
それは赤来の声である。
彼はニマニマと嫌な笑みを浮かべており、なるほどねぇ、と独り言ちるように呟く様も、何に対してなのかはわからないが、含みがあり過ぎて不気味だった。
だが、それでようやく結斗も赤来を認識したようだ。冷静さを取り戻し、不審そうに目を眇めて彼を見やった。
「――なんだよ、おまえ」
もし結斗に、身長の高さと凛々しさがあったなら相手を怯ませるに十分な睨みであっただろう。だが、如何せん容姿が幼過ぎる。
それすらも可愛いと言わんばかりに、赤来は「結構気は強いんだ〜」とまじまじと結斗を見返して頷くだけだった。