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「はぁ、また随分派手にやらかしやがったな」

 教室内の惨状を見て、心底迷惑そうにぼやく二十代後半辺りのスーツ姿のその男は、おそらく教師である。ただ一介の教員とは思えぬほどスラリと身長も高く無駄に男前で、華やかな容姿をしていた。やたらと周辺の生徒達がきゃあきゃあ騒いでいるのはそのためだろう。

(しまった……)

 教師がどこまで察したのかはわからない。だが、あらゆるものが破壊され備品一つない教室に、どんな経緯があったのか想像することは難くない筈だ。
 鳩は懸念していたことが現実になってしまう今の状況の悪さに、唇を噛み締めた。

 薺が何故始めから能力を使わず防戦に徹していたのか。
 それは――それは指導者の許可なく能力を行使することが校則で禁止されているからに他ならない。
 例え正当防衛とは言え使用は使用。何らかの罰を受ける可能性は否めないからだ。
 なのにあの時、彼が力を使ったのは、間違いなく自分達の所為で――

「あー、主犯は十埜尚樹。おまえで間違いないな?」
「――っ!」
「魔導の無断使用に器物損害。本来なら即退学、と言いたいところだが、入学初日っつーことで反省文と今日から三日間の謹慎で免じてやるわ。幸いにも怪我人はいないようだしな」
「……くっ! ……ならあいつもっ、浅霧もですよね!?」
「あーそうだな。おい、浅霧」

 教師の視線が、薺へと向いた。


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