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「『浅霧』の能力が何かぐらい、おまえも知っているだろう」
この程度もわからないのかと、薺は呆れ気味だ。そんな薺の態度に十埜は更に激高する。
「当たり前だろう! おまえ達が『空間』を操ることぐらい、知っている!」
『空間』――それが薺の、『浅霧』の能力だ。『王冠』に指定されるほどの、そしてその中で最も危険視される力である。
そこで初めて、薺が十埜に笑んだ。にやりと口角を上げて。
「――ああ。だから『飛ばして』やっただけだ。いい加減避けるのも面倒だったからな」
「――っ馬鹿な! 俺の制御下にあった物を一瞬で消すことなどできる筈が」
「何の抵抗力も感じなかったが」
「――!!」
おそらく十埜は認めたくないのだろう。
薺と自分との、圧倒的な能力差を。
悔しそうにギリッと奥歯を噛み締める十埜だが、その双眸はまだ治まらない怒りで滾っていた。
「……それで勝ったつもりか!? 俺の武器はまだいくらでも――」
と、その時だった。
「はいはい、やめろよー。これ以上ぶっ放しやがったら――退学にするぜ」
扉の向こうから教師とそして生徒が一人、姿を現した。