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 ぎゅっとその華奢な背に腕を回し衝撃に備える――
 だが、いつまで経っても予想していた衝撃は降ってこなかった。

「――?」

 不思議に思って反射的に瞑っていた目を開けば、まず結斗の旋毛が視界に入り、その変わりない姿にほっと胸をなで下ろす。
 続いて足元を見、何も落ちていない床に疑問を抱き見上げれば、天井には割れた蛍光灯の残骸がぶら下がっていた。
 ――やはりおかしい。
 先程のバリンと割れるような音は鳩達の真上にあった蛍光灯が割れた音で間違いないだろう。なのに、落ちてくる筈の破片が一切見当たらないのだ。

 そして、やけに周囲が静かなことに気が付いて目にした光景に――驚愕した。
 なぜなら。
 散らばっていたガラスの破片も机も椅子も辺りには『何もなく』、教室内は閑散とした空間と化してしたのだ。
 先程まで物が飛び交い荒れ果てていたのが嘘のように。
 ただ薺だけが着衣一つ乱さず、教室の中央に佇んでいた。

 そして気づく。
 彼――薺もまた、能力を使ったのだと。

「――なっ、なにをしたんだ!?」

 伏せていた鳩と異なり、十埜はその一部始終を見ていた筈なのだが、何が起こったのか理解できていないらしい。
 酷く動揺し、喚き散らすように「答えろ!」と声を荒げていた。


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