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(ちょっ――結までなに刺激してんだよ……)
十埜も例に洩れずそう思っていたようで、多大な衝撃を受けたらしい。
宙に浮いた無数の破片が今にも動き出しそうなほど張り詰めた空気は、結斗の言葉で更に悪化した。
ふるふると怒りに震える十埜に呼応するかのように、周辺にある物がカタカタと音を立て出しだのだ。
「間崎君……君はこの男に惑わされているようだ。――俺が目を覚まさせてあげるよ!!」
薺目がけて放たれる破片――
第一陣を軽く後方に避けることで躱した薺に間髪入れず追尾がかかる。教壇や机を盾にする薺に、ダダダと破片が突き刺さる音が激しく鳴り響いた。
(ああもうやっぱりー! つーか――)
けして反撃することなく防戦一方の薺だが、その動作は依然として余裕を感じさせるものだ。その隙のなさに徐々に焦れ始める十埜の攻め手は、最初に集めたガラス片だけではなくなっていた。
(コントロール全然よくねぇし!)
今や教室内の窓ガラスは全て割れ十埜の手駒になり、飛び交う物は椅子や机も含まれていて――
「結! おまえ呑気に見てないで離れた方がいいって」
「え、なんでだよ。おもしろいじゃん」
薺が敢えて一人離れたのは、鳩や結斗を巻き込まぬためだろう。現にこちらには破片一つ飛んでのない。
だが問題は――
ムキになり、血走った瞳で導力を振るい続ける十埜の姿を見やる。
「だってあいつ、見境なくなって――」
来てるし、と言いかけたのと、頭上でバチッと電流が爆ぜバリンッと割れる音したのは同時だった。
薄暗くなった視界と、降り注ぐ破片――
「――!」
咄嗟、結斗に覆い被さるように彼の身体を引き寄せたのは無意識の行動だった。