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 『系統能力』、そして『Sランク』。
 確かにそれは自分に自信を持つのに十分な肩書きだ。『系統能力』自体万人に持てるものではなく、その中で『Sランク』というと更に稀少な――危険な存在である。普通なら軽視できるものではない筈だった。
 あくまでも、普通なら。

「悪いが興味ない。勝手に対抗心を燃やしてくれるのは構わないが、俺を巻き込むな。目障りだ」
「――っ!!」

 薺の物言いはどこまでも冷たい。
 彼のそんな態度も冷ややかな声音も初めてで、見ている鳩でさえ固唾を飲み込んでしまった。
 そしてそれは、十埜のプライドを完全に、余すところなく逆撫でしたようだ。

「……随分、見くびっているようだけど――」

 僅かに空気が震えたのは、

「これを見ても、まだそんなことが言えるのかな――!?」

 急速に練り上げられていく魔導式の所為だ。
 十埜の言葉と共に――ガシャンガシャンッ、とけたたましい音立てて数枚の窓ガラスが、一斉に割れた。

(――!?)

 割れたのは外側の窓のため、ここまでは破片すら飛んでこないとは言え――その衝撃は目を見張るものである。
 それでも薺は顔色一つ変えなかった。

 だが、周囲の生徒達はそうはいかない。
 教室内には悲鳴が響き渡り、騒音を聞きつけた生徒達が集まりだして喧騒は更に大きくなる。
 十埜尚樹だけが、ただ一人愉しげに微笑を浮かべていた。


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