43
『系統能力』、そして『Sランク』。
確かにそれは自分に自信を持つのに十分な肩書きだ。『系統能力』自体万人に持てるものではなく、その中で『Sランク』というと更に稀少な――危険な存在である。普通なら軽視できるものではない筈だった。
あくまでも、普通なら。
「悪いが興味ない。勝手に対抗心を燃やしてくれるのは構わないが、俺を巻き込むな。目障りだ」
「――っ!!」
薺の物言いはどこまでも冷たい。
彼のそんな態度も冷ややかな声音も初めてで、見ている鳩でさえ固唾を飲み込んでしまった。
そしてそれは、十埜のプライドを完全に、余すところなく逆撫でしたようだ。
「……随分、見くびっているようだけど――」
僅かに空気が震えたのは、
「これを見ても、まだそんなことが言えるのかな――!?」
急速に練り上げられていく魔導式の所為だ。
十埜の言葉と共に――ガシャンガシャンッ、とけたたましい音立てて数枚の窓ガラスが、一斉に割れた。
(――!?)
割れたのは外側の窓のため、ここまでは破片すら飛んでこないとは言え――その衝撃は目を見張るものである。
それでも薺は顔色一つ変えなかった。
だが、周囲の生徒達はそうはいかない。
教室内には悲鳴が響き渡り、騒音を聞きつけた生徒達が集まりだして喧騒は更に大きくなる。
十埜尚樹だけが、ただ一人愉しげに微笑を浮かべていた。