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「どうも初めまして。俺は十埜尚樹(とおの ひさき)だ」
薺で目を留めた彼――十埜尚樹と名乗った人物は見定めるように目を細めると、ふっと不敵な笑みを浮かべた。
「君には一言挨拶しておかないとと思ってね。ライバルの名も知らないままじゃ、可愛そうだろう?」
一瞬、教室内に疑問符が飛び交った気がしたのは気の所為じゃないだろう。
(『ライバル』……?)
話の流れからして、彼が薺のライバルなのだそうだが、なぜそうなのか理由が全くわからなかった。相手が王冠だというなら納得がいくが、彼は――『十埜』は王冠ではない。耳にしたこともない名だった。
「おや、君は知らないみたいだね」
表情一つ変えずただ十埜を見やる薺に、十埜が浮かべたのは嘲笑だ。だが、それでも何の反応も示さない薺に十埜は更に笑みを深めて、
「『首席』は二人だったんだよ。君以外にももう一人いたんだ。――この俺がね」
と、悠々と言い放った。
「君が王冠だから新入生代表の座は譲ることになったけど、それもこれが最後だ。『十埜』ももうすぐ王冠に名を連ねることになるからね」
ペラペラと一人喋り続ける十埜に、少なからず驚いたのは鳩だけではなかっただろう。
『首席』と言えば実技――武術や魔導の能力試験と、筆記――学力試験共に優秀な成績だったということだ。
それも薺と同位――
薺の秀逸さを知る鳩にとって、彼と肩を並べる者がいることが純粋に驚きだった。
――と。
「間崎君」
なぜか矛先が結斗に向いた。