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「結っ、急に飛び付いてくんなって」

 重さの正体は結斗だ。今の衝撃は彼が勢いよく背中にのしかかってきたものだった。
 まるでおんぶお化けのように結斗に取り憑かれた鳩は、重い、重いと連呼してようやく解放された。

「おまえがちんたらしてっからだろ」
「俺は普通なの! おまえ等がズル過ぎんだってっ」

 結斗もまた、花道を通って来たらしい。だが結斗は『ズル過ぎ』という意味がわからなかったようで、何のことだと言わんばかりに不思議そうな顔をしていた。

 ――本当、顔が良いって得だ。というかこうなるなら、最初から結斗を連れて来ればよかった。
 そんな鳩の後悔を余所に、薺が呆れたように嘆息する。

「さっさと行くぞ。結斗、俺達はAクラスだ」

 薺の言葉は正論だ。
 薺に結斗、という華やかな二人が揃ってしまったことで、周辺の生徒達は遠慮からか近づけなくなってしまっている。用は済んだのだから、早く離れるべきだろう。
 「げ! 薺も一緒なのかよ!」と心底嫌そうに薺を睨みつけた結斗だったが、直ぐに渋々といった風に承諾し、三人で会場を出ることとなった。



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