「な、薺っ!!」
「薺さんお久しぶりです」

 声をかけてきたのは――浅霧薺。
 彼は鳩と結斗の幼い頃からの顔見知りで、鳩達と同じく、これから入学式を控えた郁奈宮学園の新入生である。
 そしてだ。
 彼は七つある王冠指定の一族の内の一つ、浅霧の名を持つ者だった。
 黒髪で硬派な印象を醸し出す、同じ男でもつい見惚れてしまうほど美形な彼は、頭脳明晰、運動神経抜群、仕草も声も性格も男前という非の打ち所がない人物である。

「鳩、久しぶり。こんな横暴な主を持っておまえも苦労するな。うんざりしたらいつでも俺に乗り換えていいんだぜ?」
「薺さんは優しいですね。ほんと結にも見習わせたいです」
「ちょっ! おまえ勝手に人の護衛誘惑すんなよ! 鳩も何言ってんだっ」
「じゃ、俺は新入生代表の打ち合わせがあるから先行くわ」
「新入生代表ですか。さすが薺さん」
「こらぁ! おまえら無視すんなよ!」
「じゃあな」
「はい」
「無、視、すんな、ってば!」

 騒ぐ結斗を後目に――態と鳩とだけ言葉を交わした薺に対し、結斗がとうとうキれる。
 鳩と薺の視界に割り込んだ結斗は、キっと必然的に見上げる形で薺を睨みつけた。


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