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 『総代』となった一族――そしてその一族が治める区画の利益は、十年たってようやく得られるほどのものだ。
 だからこそ皆挙って『王冠選出戦』での勝利を目指す――のだが、実際に戦うのは当主ではなく次世代の子供である。選出戦に参戦できるのは、郁奈宮学園に現行通っている者のみだった。
 そのため十年に一度、王冠指定の一族は皆、一族の中から優秀な子供を学園へと送り出す。
 否、選出戦のために教育した子供と言っていいだろう。

 そして――
 今年はその、十年に一度に当たる年だった。



 ――鳩はちらりと、隣で舟を漕ぎながら眠る結斗を見る。
 その寝顔はあどけなく、とても剣を握るような存在には見えないが結斗もまた、幼少の頃より戦闘の教育を受けてきた身だ。
 領主でもある王冠一族に産まれた者にとって、選定戦で勝利を目指すことは義務に近い。だから結斗も、五ヶ月後に開催されるその戦いでは激闘の中に身を投じることになるだろう。
 そしてその時は――
 鳩はそっと目を伏せた。



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