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 今日は郁奈宮学園の入学式当日――

「いいか、俺らはこれから間崎の名を背負って立つことになんだから、毅然としてろよ」

 目の前にそびえ立つ壮大な洋館――ではなく郁奈宮学園の校舎をじっと見つめながら、両手を腰に当て、仁王立ちで意気込みを告げるのは間崎結斗。栗色の猫っ毛に華奢な体躯、そして美少女と見間違うような容貌を持った少年である。
 そんな彼の隣に立つ鳩は、自分の主である彼に対し「はいはい、了解」と適当に返事を返した。

 と、怒られた。

「『はい』は一回! ちょっ、おまえがそんなんだと全然しまんないじゃんバカ!」
「いっ!?」

 しかも腹に一発付きだ。
 結斗は小柄だが鍛えられている彼の拳はかなり痛い。鳩は身折って呻いた。
 結斗は昔から、口と同時に手もでるタイプである。
 幼い頃から兄弟のように一緒に育ってきた鳩にとって、彼の鉄拳を受け止めることは慣れっこ、と言われればそうなのだが、痛みはまた別だ。まだ慣れない……というか例え慣れたとしても全然嬉しくない。

「結は乱暴すぎだってっ」

 涙目で結斗を見やれば彼はニタリ、と悪い笑みを浮かべていて。

「易々と殴られる鳩の修行が足んないんだよ。ふっふっふ〜俺の勝ち!」
「え、これ勝負? なんか卑怯すぎない?」

 突然そんなことを言い出す結斗に、鳩はげっと身を引いた。
 彼がこういう時は、確実に碌なことを考えていないからだ。

「すぎないすぎない。罰として荷物持ちなっ」
「んな、屈辱的な!」

 案の定、「問答無用!」という言葉と共に降ってきた結斗の鞄を慌てて受け止めた鳩は、

「――相変わらずコントみたいなことしてんな、おまえらは」

 背後からかけられた言葉に、あっと振り返った。


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