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「あの、実は片瀬先輩から伝言を預かってるんです」
「片瀬……それって結の親衛隊隊長だった?」
心当たりのあった名前に鳩が確認すれば、はい、と肯定が返って来た。
片瀬――片瀬弓弦は確か鳩達の二つ上の先輩だった筈だ。
結斗が区画学校に入学した当初、最初に結斗の親衛隊を設立し隊長を務め上げ――そして、卒業後はこの郁奈宮学園に入学したと聞いたことがある人物である。
鳩達が最後に片瀬と会ったのは、彼が涙ながらに去っていった卒業式だった。
「まだ連絡取り合ってたのかよ」
結斗が呆れたように言えば、理々はふふ、と柔らかに笑ってはい、と頷いた。
「先輩、卒業してからも結斗様のことが知りたいと仰られて、定期的に連絡を取り合っていたんです」
「あの人、ほんと結のこと好きだったもんなぁ」
片瀬弓弦という人はなんというか……一言で表すなら『変人』だ。
美しいものや可愛らしいものを心から愛する性癖の持ち主で、その要素ぴったりと当てはまったらしい結斗を愛でることに余力を惜しまない人だった。
ただ、変人と言っても退治しなければいけないような変態ではなく、信頼できる人物ではあったが。