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「この辺りかな」
「あれじゃないか?」
所々に張られた案内を見ながら受付で教えられた番号の椅子がある辺りへ行けば、既に周辺の座席はほとんど埋まっていた。
そのため空席を探し易く、自分達の座席がどれなのかすぐに当たりをつけることができた鳩と結斗は、その座席へと向かう。と、近づくにつれて着席している周囲の生徒達の視線がちらちらとこちらに向き始めた。
そしてその視線は、最初は何気にないものだったのだが、結斗を見ると総じて色めき立ち始める。
理由は勿論結斗の容姿なのだが、それだけではなく、結斗が間崎――王冠だと知って騒いでいるものもいるようだ。
そうちらりと生徒達を確認した鳩は、その中に見知った顔があるのに気が付いた。それは区画学校で一緒だった生徒達だ。
『区画学校』とはこの学園に入学する前に通っていた学校のことで、鳩や結斗の場合第二区内にある学校のことである。
鳩達の他にも、難関と言われる郁奈宮学園の入学試験を通過していた者がいたらしい。
――と。
「――結斗様!」
着席していた生徒の一人がガタンと音をたてて立ち上がり、結斗の名を呼んだ。