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「――彼が……」
赤来が指す方向にいたのは遠目からでもわかるほど存在感を放つ美形だ。
(これは……鞍眞とはるな……)
鞍眞とは鞍眞嵐。
派手な橙色の髪に制服を着崩した如何にも不良といった身なりの、カリスマ性を持つ現生徒会長である。
そして鞍眞は稀に見ぬ端整な顔立ちをしているのだが、浅霧一族の新入生もそれに劣らない容姿をしていた。
――間違いなく彼は鞍眞の後任となるだろう。
「あ!」
「……今度はなんだ?」
「『間崎』だよ、間崎! ほらあそこ」
『間崎』。それも王冠の一つだ。赤来の視線の先へと目を向ければ、そこには二人の生徒の姿がある。
「うわ、マジ可愛ーなぁ! すっげぇ好みのタイプ!」
「どっちが間崎なんだ?」
「どっちもだな。データによると茶髪が次期当主候補で、黒髪は護衛だとさ〜。――お、黒髪も中々悪くないじゃん! ちょい地味だけどああ言うタイプはベッドの中じゃ――」
「君……まさか王冠の人間に手をだそうとしてないだろうね?」
そこでふと、冬夜は赤来の言動に不安を覚え声を低め告げた。