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「――お、発見〜」

 校内の一室、数名の生徒が集まる部屋で、窓の外を眺めながら楽しそうに独り言を告げる赤来未狼に、執務を一つ片付け終えた鳳城冬夜はため息を吐いた。

「赤来、外ばかりながめてないで、仕事をしてくれないかな」

 珍しく朝早くからこの生徒会室に顔出した思ったら、外――否、続々と正門をくぐる新入生ばかり眺めて一向に仕事をする気配がない。そんな彼の楽しげな声に、冬夜の我慢は限界に達した。

「入学式当日になったからって僕らの仕事は終わったわけじゃ――」
「鳳城、見なよ」

 と、いきなり。言葉を遮って赤来に呼ばれた。
 『見なよ』とは勿論、彼が見ている新入生達のことだろう。

「悪いが君に付き合っている暇はないんだ」

 だが冬夜はそんなものに興味はない。それよりも今は山積みになっている書類の方が気になってしかたがない――筈だったのだが。

「あれ、『浅霧』だぜ」
「――!」

 告げられ名に、思わず反応してしまった。
 ――『浅霧』とは自分達と同じ王冠だ。心の中にある好奇心が疼く。
 赤来に乗せられた形になるのは気に食わないが、これも今後のための情報収集だと言い訳をつけ冬夜は席をたった。


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