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「――何なんだよあいつ!」

 人混みに埋め尽くされて夕月の姿が見えなくなったところで、結斗が苛立たしげにそう吐き捨てる。
 そして気色わりぃと身を捩らせた結斗は、くるっと鳩を振り返ると据わった目でじっと鳩を見つめ、言い聞かせるように告げた。

「鳩。おまえもあいつには関わらないようにしろよ」
「了ー解」

 同じ学園の新入生、そして王冠同士顔を合わせることは今後もあるだろうが、夕月はとてもじゃないがお近づきになりたい人物ではない。
 だから友好的に接するつもりもなければ、彼を結斗に近づかせないようにすることも既に心に決めていた。
 鳩は返事を返して、ふと思う。

「結は相変わらず変なのに目つけられ易いよな」

 そして何気なく思ったことを口にした。
 昔から、結斗はその天使のような可愛らしい容姿の所為か怪しい奴に狙われ易く、今まで報われぬ想いからストーカー化し出す変態達(しかも男)を退治した回数は数える気にもなれないほどだった。
 特に十を過ぎたくらいが一番大変だったなぁ、と鳩はしみじみと思い出し告げたのだが、それは地雷だったらしい。


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