SS/愛は踊る3
2012/01/09 18:59

*+*+*

 左にクダリ、右にノボリ、真ん中に獲物…もとい、トウヤ。
 トウヤは両手首をふたりに掴まれ、椅子に座らされたまま動けずにいた。
「髪の毛べったべた。気持ち悪くない?」
「あ!」
 トウヤの愛用している帽子を片手でちょいと取り上げ、手近なデスクの上に放り投げるクダリ。
 ハニミツがついた手袋を一瞥すると。
「甘いね〜」
 笑いながら歯で中指の先を噛み、取り払うように手袋も放り投げた。
 ぱさりと帽子の上に落ちる手袋を見送って、トウヤはごくりと喉を鳴らす。
 やばい、これはやばい、どれくらいやばいかって、すげぇやばい、クダリさんマジだ、誰か助けてええええぇええ!
 トウヤのこめかみからハニミツとともに冷や汗が一筋流れ落ちた。
 ぢいぃいいい……
「ぅえ?」
「これは、クリーニングが必要ですね」
 いつの間に手袋を取ったのか、ノボリの手がトウヤのジャケットのファスナーを卸していた。
 ノボリさんもマジかあああああああ!
「ちょ、ちょおおおお!?」
 トウヤの制止を振り切ったノボリの手は、ジャケットを肩から下ろし、腕のあたりでたごませた。
「しかし、中は無事ですよ」
 ノボリはトウヤに微笑んで見せたが、トウヤは恐れ慄いてかくかく首を振っただけだった。
「え、なーんだ、中まで染みてないのか…」
 クダリは掴んだ手首のあたりでジャケットをまとめると。
「残念」
 大げさに肩を落として見せた。
 べろり。
「うひぃっ!?」
 肩をびくつかせるトウヤ。その耳元にはノボリ。
 伸ばした舌で再び耳朶をねっとりと舐め上げると、
「失礼、蜜が垂れておりましたので。」
舌の上にのせたハニミツを見せつけるように、トウヤの目の前で口の中へ収めた。
 ごくり、とノボリの喉が鳴る。
「甘いですね」
 赤い舌が色の薄い唇を舐めた。
「う…! ううううう!」
「おお、急に赤くなった。
 トウヤ、ノボリにメロメロ? メロメロ?」
 クダリがニヤニヤ笑いながら、トウヤの顔を覗き込む。
「違います!」
 赤く染まった顔を恥ずかしまぎれにそらせば。
 かぷっ。
「ッ!?」
 耳の下、首筋あたりに噛みつかれたような衝撃。
「あむあむあむあむあむあむ」
 クダリは首筋に歯を軽く立てると、食むように口を動かした。
「あ、あっ、あ!? やっ!」
 むずがゆさに肩をすくめながら、トウヤは逃げるように身をよじる。
「なかなかやりますね」
 ノボリの唸るような声に、クダリは唇をトウヤの首筋につけたまま「むふ!」と、笑うように答えた。
「負けません。」
 ノボリの低い声がトウヤの耳に呼気ごと響く。
「あゃんッ!」
 背筋を震わせ、変な声が口から飛び出たことに恥ずかしさを覚えて、とっさに唇をかむトウヤ。

 ぷるぷるぷるぷるぷるぷる……

 次の瞬間、震えだすノボリとクダリ。
「……?」
 攻めの手が緩んだことに、トウヤは思わず首をかしげると。
「やばい! 今の声ちょー可愛かった!」
 首筋に埋めていて顔をがばっと上げるクダリ。
「は、鼻の奥がツンと致しました…!」
 口元に手を当て、赤くなった顔を隠すノボリ。
「は、はあ……?」
「もっかい! リピ希望!」
 クダリの手が、首をかしげるトウヤの胸元に伸びる。
「な!」
 それに先に反応したのはノボリ。負けじとアンダーシャツの中に手を入れた。
「ぅひ!?」

バタン!

「ボス、それ以上はアカーン!」
 けたたましい音を立て扉を開け放ち、その場に涙目で躍り出たのは。
「クラウドさん!」
 トウヤが助かったとばかりにその名を呼べば。
「ゼブライカにワイルドボルトされればいいのに。」
 こめかみにぴきぴきあおすぢ立てつつ、クダリはにんまりと笑みを浮かべる。
「ギャロップの二度蹴りは強烈ですよ」
 おおきなため息をついて、ノボリはゆらりと背筋を正した。
『上司の恋路を邪魔する奴は…?』
 綺麗にハモるノボリとクダリ。

「引けん! ボスと言えど引けません!
 この記事パスついとらんですからぁああああ!」

 クラウドは涙をぼっろぼろこぼしながらそう叫んだのだった。


+*+*+*
クラウド落ち。
お粗末!



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