SS/めでたい人々2
2012/02/14 12:31
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「重そう!」
「色〜んな意味で重いですよ」
クラウドは疲れた顔でハッハッハ、と乾いた笑い声をあげながら、部屋の中に入り、どさっ! と音を立てて段ボールを置く。
「必ずお二人に渡してください、なんてのは可愛い方で。」
首と肩をを回して大きくため息をつく。
「必ず口の中突っ込んでください、良いだけ返事もらってきてください、ってのまでありますよ。」
目頭を揉んで再びため息。
「ワシらに託しとる次点で…て、ああ、いや、言うのやめときますわ。
女の子たちに呪われたないんでね。」
「お…お疲れ様です。」
「お、おつかれ」
何かあったに違いない。
ノボリとクダリは女性の怖さを知っている。
2人揃って、思わず背筋を震わせた。
「どーも。
ひのふのみの…こっちがノボリ様、こっちがクダリ様ですね…
分けて置いとくんで、目だけでも通してあげてください」
「ええ。」
「ありがと」
ほいじゃ、仕事あるんで、と。クラウドは部屋を出てゆく。
「お待ちください!」
すれ違いざま、ノボリが待ったをかけた。
「胸ポケットに入っているのは何方から頂いたものですか?!」
「え。あ。ああ…これですか?」
驚いた表情で振り返り、クラウドは『スナップが止めてあったはずなんやけど』と首をかしげながらポケットからひと箱取り出した。
「あ…!」
クダリもその箱を見て目を見開く。
「トウヤくんからもろたんですけど」
やはり、とノボリの口が動く。
「それボク宛じゃないの!?」
「それはわたくしではないのですか!?」
「残念! ワシ宛です! ていうかよくわかりましたね!」
エキサイトし始めた2人をなだめるべく、話をそらそうと試みるクラウド。
『匂いで!』
綺麗にハモるサブマスに。
「ニオイ!?」
クラウドはコガネ人の命・突っ込みを忘れた。
「な、何故クラウドさんに差し上げてわたくしに無いのでしょうか…!」
制帽の唾を上げ下げして動揺を押し隠すノボリ。
「どう見ても、クラウドのは義理! トウヤの義理チョコなんて欲しくないもん!」
くやしくない、くやしくない! と、繰り返すクダリ。
「何かワシ、すごい言われようやない…?」
『で、トウヤ(様)はどこに!?』
再びハモってクラウドを追い詰めるサブマス。
必死過ぎるやろ! と心の中で突っ込みをいれるクラウド。
「トウヤなら、トウコと一緒にマルチ乗っとりますよ。
直接お渡しするつもりなんじゃないですかね?」
ぴっぴっぴっぴ。
「もしもし、ノボリです。
そちらにトウヤ様とトウコ様が御乗車なされているようですね。
なるべく手短にお願いいたします。手を抜け、などとは申しませんが。ええ。」
「ボク、クダリ!
トウヤとトウコが乗ってる筈!
サクサク倒されちゃって良いよ、ノーマルだし、どうせ本気でやったって負けちゃうでしょ?」
某所に通信を入れる2人。
圧力を掛け終わった次の瞬間。
「本命はわたくしです!」
「何言ってるの!? ボクに決まってる!」
大股で歩き出す2人の背を見送って、クラウドは大きくため息をついた。
「…これ…職権乱用やろ。」
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まさかのもうちょっと続く!
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