(む…あの雲のかたちは…)
「なー、あの雲さーピカチュウ
みたいだよなー!」

俺の席は窓際の一番後ろ。
入学式の時は名前順で
座っていたがそれからすぐに
席替えがあった為現在は
一番好ましいとする席にいる。

「なー、そう思うだろー!?」

そう、先程から執拗に話しかけてくる
目の前の男さえいなければ、好ましいと、
思っていたのだよ

「さっきから何なのだよ、お前は」
「ブッフォ!!!なのだよ、って
お前、なのだよって!!!まぢウケるわ!!!」
「失礼な奴だ…「緑間真太郎」

この失礼極まりない奴は
笑い声をピタリと止め
鋭く瞳を細め口角だけを
上げ俺の瞳を射抜いた

赤紫の瞳のその奥から
捉えられた様で逸らす事が
出来ない、正直にそう思った。

「ははっ、んなびっくりすんなよ。
アンタは自分が思っている以上に有名人なんだぜ?」

(俺を有名人と称するという事は
バスケ関係者か…)

会話の中で考えるも、他人に
興味なく生きてきたせいか
人物の特定までには至らなかった。

「…んとに覚えてねーのかよ…」

伏せられた瞳から聞き取れない
声で呟かれる。

捉えられていた瞳から
解放され視線を窓に戻す


「真ちゃん!」

思わず眉間に皺がよる

「…っなんなのだよ、そのふざけた呼び方は」
震える声を無理矢理落ち着かせ
問いただす。

「俺は高尾。高尾和成っつーの!
ココにはバスケする為に来たの
要は真ちゃんのチームメイトってわけよ。
っつーわけだから、以後よろしくな!」

先程の鋭い瞳からはなんとも
想像し難い笑顔が向けられる。

あどけない笑顔
どこか幼さが残る様な、
そんな笑顔だ。

「ふん、まずはそのふざけた呼び方を
直してから出直してくるのだよ馬鹿め」

眼鏡のブリッジを上げ直し顔を背ける

ツレねーな、と言いながらまた笑った。

他人に興味なんてまるで無かった、が
この男…高尾和成の笑顔というものに
僅かながらも揺さぶられた
なんて、そんな事はないのだと、
言い聞かせる桜舞う春の日のこと。



(あの時のお前はなかなか迫力があったのだよ)
(惚れたー?)(お前との会話は難しいのだよ)
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