「ねぇ、真ちゃんは遭難して何か一つ
持って行けるとしたらやっぱり
ラッキーアイテムなの?」

「ふん、愚問なのだよ」

しかし、と続けて緑間から深いため息。
今日だけで一体何回目だろうか。

(仕方ないか)

「本当に遭難している状況で
その質問はどうかと思うのだよ」

そう、俺たちはただいま絶讃遭難中
ここにあるのは闇夜に揺れる水平線と
光瞬く無限の星空だけ

静けさから波が寄せる音が大きく響く

実は内心この状況を幾らか楽しんでいるが
この神経質なお姫様はそうはいかないだろう
早いところなんとかしなければ、
と策を練るもアイディアなんて思いつかず
一呼吸入れるための会話が冒頭のもの。

「あ!見て見て真ちゃん!流星!」
「帰宅帰宅帰宅」
「ちょw真ちゃんの願いなんだよそれ!
まぢうけるわ」
「今の俺の本心なのだよ」

笑い事ではないのだよ、と眈々と告げる。



「高尾は…」
「?」
「お前は…どうやらこの状況を
楽しんでいる様だか…恐く、ないのか…?」

目は合わせない
前を向くでもない瞳は
その先に何を見ているのか…。


「真ちゃん、上見てみろよ」

砂浜に身を預け寝転がり空を見上げる。

ほら、また流れ星。

宇宙を架ける星
一生分の輝きは弧を描いて静かに消える
儚いからこその美しさに胸が詰まる

「ねぇ、空はひろいね」
「あぁ…」
「こんなに広い宇宙の中で俺たち
出会えたんだぜ、すげーよな」
「…」
「真ちゃん風に言うなら運命なのだよ、ってところか?」
「くだらん。真似をするなと言っているのだよ」
「まぁまぁ、そう言うなって!
俺は本当にそう思ってるんだからよ」

限りない水平線に目線を戻しながら、
「ふん、馬鹿め」と一言いって、また俯いてしまった。

表情は汲み取れないが、言葉のトーンからさっきまでの
不安は多少はなくなったんだろうと思う。


(いや…、俺がそう望んでるのかもしれねーわ…)


白く輝きを放っては弧を描いて
消えていく星屑をみながら思い出す

「スプートニク…」
「ソ連の人工衛星の話か」
「そうそう、流石真ちゃん」
「ふん、当然なのだよ。むしろお前が
知っていた事に驚愕するのだよ」
「容赦ねーな」

「あの犬は、可哀想なのだよ。」
人間の都合で死んで行った…たった一人で…
ぽつりぽつりと緑間の口からその犬を
悼む言葉が零れる

そうだ、あいつはこの広い宇宙を
たった一人で死んでいった…

隣には誰もいない。
自分か何処にいるかもわからず、
フラストレーションだけが募り、
意識が途絶えていく。
それってどんな気持ちなんだろうな、
なぁ。

「俺にはわかんねーわ」
「は?」
「その犬の気持ち、俺にはわかんねーの」
「お前の周りには、いつも人がいるからな…」
「ちげーよ、俺の隣にはいつも真ちゃんがいるから」
「何を言ってるのだよ…」
「俺はね、真ちゃん。
なんだかんだいつも真ちゃんが
居るから寂しいとか感じねぇの。
すげーよな、魔法みたいだよな。」
「俺は、そんな事は…」
「俺も、真ちゃんに魔法をかけてやれたらって、
いつも思う。」

俺が感じてる以上のこの想いを、
このお姫様をいつだって不安になんか
させないでやれたら、っていつだって思ってる。

「だ、から、お前は…、お前と言うやつは…」
「あっは、真ちゃん顔真っ赤だよ」
可愛いい、なんて頬をなぞると
触るなと顔を背けられる。

あぁ、残念。
もっと触れていたいから代わりに
背中から砂浜に寝転ばせてやる

「なぁ、真ちゃんは寂しい?」
「お前は、俺にそうなって欲しいのか?」
「…っ!くっ、はっ!やっぱ真ちゃん最高だわ!
うん、だいすき!!」
「人の耳もとで騒がしいのだよ!」
「させねーよ。真ちゃんにそんな思いをさせるわけねーだろ」
「ふん、当然なのだよ」

あーぁ、本当にこのお姫様には叶わない。
こう言うところが堪らなく愛おしい。

「誓うよ、真ちゃん。
俺はずっと真ちゃんの傍にいる。」

「お前がそう誓うなら俺も、
考えてやらない事も…ないのだよ。」

なんだよそれ!って言いながら笑って、
キスして永遠を誓った俺たちを星たちの
瞬きが祝福する様に唄っていた。



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -