休み時間
音楽室

外から聞こえる同学年の
騒がしい声すらも遠く聞こえる

今俺の全てを支配しているのは
このお姫様から奏でられる旋律

細くしなやかなその指からは
左手にのみ施されたテーピングなど
まるで関係ないと言わんばかりの演奏

心地良い、メロディ

白と黒の盤上におかれた指が愛おしく、
伏せ目がちの仕草に煽られるがここで
手を伸ばす事は許されない

何よりも俺がもっと聴いていたい
そぅ、思う。




曲の終わりを見計らって拍手をおくる

「流石真ちゃん、おみごと!」

「ふん、黙れ」

眼鏡を直しながら素っ気ない返事
視線をずらす様に顔を背けるが
ずれてないくせに眼鏡を直す
素振りをする時は、大概照れ隠し


(こういうところがなぁ…)

俺には堪らなく愛おしい

「真ちゃんは可愛いねぇ」

「お前の言葉に脈絡と言うものはないのか」

「自分に正直に生きるとこうなる」

「ふん、愚かだな」

顔が紅潮しているであろう事は
後ろからでもわかる

(耳真っ赤…)

静かに笑う
そんな君が何より愛おしい


「真ちゃん」

引き留める様に、
お姫様の手のひらを唇によせる

静かな空間に響かせる様に
リップオンをひとつ。


あぁ、愛しい我が君…
どうか俺と音を奏でよう
君との今を、刻みたいんだ



(どうか、途切れる事なく…いつまでも…)





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -