望んだ覚えはないけれど、
ふとした瞬間に、
手に入るなんて事は
ままある事だった

こいつもそう。
透き通る程に眩しい
金髪に白い肌が映える

女みてーな容姿に長い睫毛と大きな瞳で、
いつも真っ直ぐに俺だけを見る


俺を本気にさせる数少ない人間


こいつに気があったわけでもないし、
俺は女の方が好きだ

けれども、前述でも述べた通り
こいつは男のくせに女みてーな奴なわけで
情に駆られることだってあるだろう


(まぁ、男なんて情で動けるからな)


さつき辺りが聞けば最悪だと罵るだろうが…

まぁ、関係ねぇ…。

こいつは俺が俺である限り
こいつはずっと俺を追いかけ
続けるんだろうし

それでいい。
このまま、ずっと俺を見て
俺の隣であほ面晒して寝てればいいんだ







「は…?」

「だから、俺アンタの事好きじゃ
なかったみてーなんスわ」

部活後の帰り道、
他愛ない話をしていたら唐突に告げられた


「俺アンタに近づきたくてバスケ部入ったっス。
今もまだ、全然追いつけてねーっスけど
ただ、アンタと恋仲になってキスとか
エッチとかしたんすけど、なんか、
別に…俺の中でアンタはアンタだった
みてーなんスわ、青峰っち」


好きと憧れが混合してたみてーっスと
無駄に滑舌のいい口からはっきりと
伝えられる


状況を整理しようにも思考が追いつかない

ただ、わかるのは
俺の知らない顔で
俺の知らない瞳で
淡々と告げられる
俺への告白

さよならを紡いでいく言葉

「あ!でも、アンタはそのまま俺の憧れの人でいろよ」

鋭利に瞳を細め、ニヤリと口角をあげる

俺の知ってる黄瀬の笑顔とは程遠い
瞳が笑っていない、そんな顔


甲斐性のない俺はそーかよ、としか
言葉に出来ず、背を向けて手を降る
黄瀬を横目で見る事しか出来なかった


震えない様握りしめていた掌を解く
停止した思考を徐々に働かせる

アイツは俺にとってなんでもない
好きでもなければ
女みてぇだったから抱いただけ
色っぽい情など欠片もないのだ

昔に戻っただけだ
そう、言い聞かせる様に空を見上げる



おかしい
思い出す黄瀬は俺を見たら
太陽みてぇに眩しい笑顔で
人の顔見ては1on1とキャンキャン
うるせぇ犬みてぇな奴だ

あんな、獲物を見つけた
野犬みてぇな、黄瀬は知らない

(まいった…)

思い出すたびにアイツの仕草、行動、声全部が
こんなにも愛おしいものになっていた事に今更気付く


(なんか、こういうのさつきの持ってる漫画にあったな…)

茜色の空はいつの間にか闇に沈み
肌寒さも増していた

(柄じゃねぇけど…)


望んで何がを欲した事は少なかった
今では望む事すらやめていた、

けど、

(くそ、黄瀬のくせに…)

懐かしい気持ち
高揚感に身体が燻る
久々に何かを欲しいと
そう、臨んだんだ








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -