珍しくスタメン全員揃って出かけた帰り道。
夕日が華やかにさして、
山際に近くなっている時刻
カラスが鳴きがら巣に戻り
風の音に乗って虫の鳴き声も
聴こえてくる
しみじみと日本の四季を肌で感じる
その中でも、やはり秋というのは
なんて悲しい季節だろうと昔誰かが
言っていた事を思い出す。
本数の少ないバスに乗り、手元には
愛用のシェイクを持つ彼の隣に
座ろうとしたが、我が部のキャプテンに
阻止されその思いは叶わず…
止む無く2人席を1人で独占している
意地悪い顔をした彼を退かせ、隣に座る
声を掛けようと目をやると、
既に瞳は閉じられ、窓際に首をねかせ
微かに空いた口元から寝息が聴こえる
ガラスを挟んで差し込まれる光に
青みがかかった髪が肌の黒さで
引き立てられ、吸い込まれそうな程
輝いていた。
触れたい衝動に駆られ手を伸ばそうとしたところで
バスのブレーキの掛かった音で我にかえる
(うわ…俺いま何しようとしてんスか〜…)
自責の念を胸に抱き、両手で顔を隠す
今顔をあげる事など毛頭出来ないであろうので
大人しく隣の彼の肩にもたれ掛かる様に身体を預ける
揺れる社内で身を寄せ、
包まれた香りに酔いを感じた、秋の夕暮れ
茜色に染めて…