秋の長雨とはよくいうもので
静かに、それでも確実に浸透していく


本日の降水確率はさほど高くなかったので、
油断したのだろう。

帰り道の途中見事に降られてしまった。

幸いな事に近くに雨宿り出来そうな場所を見つけ、
二人で駆け込む。

その場所は昔からある様で
木造建築な上に天井も狭い。
長身の男子高校生2人が入るには
ひどく窮屈な場所だった。

口に出して文句こそ言わないものの
その表情は上空の雲に負けず劣らない程の
暗雲が立ち込めている

そんな表情さえも可愛らしい
なんて思う俺は、いよちよ末期だな、
なんて状況にそぐわない思考を巡らせ、頬が緩む。

何を笑っているのだよ、と指摘され
お得意の笑顔ではぐらかす。


このお姫様がなるべく濡れないよう
奥へ誘導してやり、目線を外に向ける


まいったね、なんてお茶らけながら
振り向くと真っ直ぐな瞳が向けられる

艶やかな髪から水滴が零れ扇状的な、仕草に
思わず喉がなるのを感じる


震えている肩に気付き、煩悩を振り払った

9月の中旬ともなれば涼しさが増し、
過ごしやすい気候となるものの
雨となれば話は別である

どうにか拭ってやりたかったけど
残念ながら服は透けほど濡れていたし
タオルも今日の練習で汗を吸収しすぎている


頭を抱えている所でふと、思い出す。
カバンの中から濡れていない学校指定の
ジャージを取り出し、お姫様の肩に掛けてやる。

お前のだと小さいのだよ、と憎まれ口を叩かれるが、
この程度であれば可愛いものである。
その証拠に掛けたジャージは離さない。
お姫様から安堵の息が漏れるのを感じた。

暫くしたら止むだろうと見越し、
他愛もない話をしながら過ごす。



忘れかれていた時間を思い出し、携帯に目をやる
髄分と話していた様だが雨は
一向に収まる様子を見せない。

「真ちゃん、俺ひとっ走りしてコンビニで
傘買ってくるからちょっと待っててよ」

流石に不味いと判断し、お姫様に背を向ける。
足を踏み出そうとした所で袖を掴まれた。

振り返ると、視線を泳がせ、
口を震わせるお姫様。

寒い?って聞くと表情を
隠す様に俯き頭を横に振る。


しっかりと耳を傾けていないと雨音で
かき消されてしまいそうな程の声で告げられる。

「い、行かなくても、いい、のだよ …」

まったく、このお姫様ときたら、
なんて愛おしいんだ。



君を想う気持ちが、
深く、深く浸透する。

降り続ける長雨の如く、
俺の中に静かに、確実に…


降りしきる秋雨
音もなくしみ込む雨水
足元から侵食され、染み込む

抱きしめる代わりにキスを一つ落とす

瞳の奥に、太陽を見つけた。







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