正臣は真剣そうな顏をしつつデスクトップとにらめっこしている臨也をみて、手に持っていた書類を豪快に落とした。はっと我に返り、自分自身でも吃驚しながら、こちらを振り向いた臨也に謝罪の言葉を述べて、辺りに散らばった書類たちを片付ける。
ーーーどうしたんだろう、俺
ゆっくり拾いながら考える正臣をみて、臨也は不思議そうに見つめた。その視線には気が付かずに、拾い続けていると、臨也は静かに立ち上がる。その気配に漸く正臣は顔をあげた。
「臨也さん。どうかしましたか?」
無情の声で、顔で問いかける正臣を近づきながら見続けて臨也は、
「それはこっちの台詞だよ、紀田くん」
声は無情、顔は笑みを張り付けさせて言った。そのまま近づいて、三十センチメートルほどの空気の隙間しかないくらい至近距離にいる臨也を、見上げて正臣は首を傾げた。
「どういう意味です?」
正臣は首を傾げた状態のまま、言った。臨也はゆっくりと手を伸ばし、足を動かせ、ぴたりと正臣の額に手を当てた。冷たっ、と正臣は悲鳴をあげた。それをみて、体温を感じて、臨也は確信する。
「熱、あるじゃないか。今日は帰っていいよ。移されたら困るし」
微笑みながら言う臨也に、正臣は首を横に振った。大丈夫です。そうか細い声で、熱があることが判明したせいで身体にじわじわくるぼおっとした熱を感じながら、正臣は首を何度も何度も振る。
臨也は少しだけ困ったような顔をし、溜め息を吐いたあと決心したかのように正臣を持ち上げた。お姫さま抱っこ…ではなく、担ぐようにだったが。それでも正臣はなにをされたか、一瞬脳ミソが働かなくなって思考停止して、三秒ほどで我に帰った。ぼぼぼっと熱のせいなのか、単に恥ずかしいのか、軽々と持ち上げる臨也に怒りを感じたのか、自身には解らない頬からでる火照りを実感しながら正臣は暴れるわけでもなく、自分の身を臨也に預けた。
ーーーなんか、安心するなあ
とくんとくんと伝わってくる臨也の温もりが暖かくて、心地よくて、正臣はゆっくりと瞳を閉じた。



20110318
ちょっと前に書いた奴。ももちゃんのために書いたよ!甘いよ!


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