俺のことを紀田くん、と呼ばないでくれ。帝人に言うと、不思議そうに首を傾げつつも理由は聞かずに「判った」と返事をしてくれた。「ありがとう」今の俺は笑っているだろう。俺のことを紀田くんと呼ぶのは、臨也さんだけで充分だ。ってか親しい中なのに、名字呼びしてくる帝人が少し可笑しいのだ。あ、今度は杏里にも言わなきゃな。しかし杏里はこれからもずっと俺のことを、紀田くん呼びしそうだな。臨也さんだけで充分なのに。これ二回目だ。やべえ、なんか臨也さんの顔が、すんげえ憎たらしい顏をしている臨也さんが頭から離れなくなってしまったではないか。ちょ、これやばい。夜寝れない気がする。
「…まさお、み?」
帝人が俺の名前を呼び捨てにしたから、一気に現実へと戻ってきたような感覚がじわじわ襲ってきた。うん、帝人に名前呼びされてもムカつかないし、寧ろしっくりくるな。
「どうした?帝人」
「いや、正臣がなんか上の空だったから」
そうだろうか。脳みそは意外にも働いてくれているぞ。余計なことまで考えてしまっているが。
「俺さ、折原臨也が嫌い」
「それくらい知ってる。けどさ、なんでそこまで嫌っているの?普通にいい人じゃん」
「お前、騙され過ぎてるぞ。あいつは悪魔だ」
そう、悪魔だ。滅茶苦茶悪いことをしているんだ。俺もしていたっちゃしていたが、臨也のあん畜生よりはましだろう。
「悪魔…か」
「そうだ。人が苦しんでいるところを見て、あいつは笑っているんだ。悪魔以外の何者でもない」
耳元で「俺のために死んで」と言ってきたことがあるんだぞ、もう死神クラスじゃないか。散々帝人に愚痴っていると、悪寒がした。なんかやばいやばいやばい。

「人の悪口、言わないでほしいな」
「あ、折原さん」


20100116


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