「ねえ、水の中においで」

水槽越しだと何もできないじゃない、と思った時、思わず口に出してしまった本音。知多は苦笑いをして「無理」ときっぱり言った。

「どして?」
「水の中にいると俺は死ぬから」
「なんで?」
「息ができないから」
「あたしはできてるよ?」

動き続けないと息できなくなっちゃうけど、とは言わなかった。知多は苦笑いしたままごめんと謝ってきた。

「許さない。水の中に入ってこないと、許さないんだから。あたし」
「ごめん」

ああ、もういいわ。無理なんでしょう。悲しそうな顔をしている知多に冷たく言い放って、あたしは水の中を泳いだ。つまらない。あたし一人ぼっちなんだもん。地上に出てきたらあたし、死んじゃうんだもん。知多も水の中に入ると死んじゃう。

「…結ばれない運命なんじゃない」

どうしてカミサマと言う者はあたしと知多を巡りあわせたのよ。

「カミサマなんか、嫌いよ、大嫌い」

20110108

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