「ねえ、好きって言って」
「すき」

感情を込めないで言ったトウヤに、Nは思わず苦笑した。

「つれないね」

Nは苦笑したまま言うと、トウヤはムスリとした顔をして
「そんなことない」と返事をした。

Nはその返事が気に入らずに口を尖らせて、スリスリと寄ってきたチョロネコの頭を撫で始める。
一回、二回、三回とゆっくりゆっくり撫でるNに、チョロネコは気持ちよさそうに瞳を閉じた。
トウヤはそんなNをただ静かに見つめている、と。
急な強風が二人と一匹に襲い掛かってきた。思わずトウヤとNが瞳を閉じ、チョロネコが驚いて逃げていく。
数秒ほどで風はやんだが、二人はぽかんと口を開けてしばらく経っても動かないでいた。

「…ふふ、トウヤ変な顔」
「………そういうNだって」

クスクス笑い始めるNに、少し笑みを零して柔らかめな口調で言うトウヤ。

「キミは幸せかい?」
「オレは幸せだよ」
「Nは幸せ?」
「ボクも幸せかな」

「ボクね、旅に出ようと思うんだ」
「もうでてるじゃないか」
「うん、まあ、そうだけど。ここじゃない地方に行って見たいんだ」
「…そっか」
「寂しい?」
「そんなわけないじゃないか」
「…キミならそう言うと思っていたよ」

二人は話した。
他愛のない話だが、二人は楽しそうに、日が暮れるまで話した。

「You better let somebody love you.
before it's too late. 」
「…発音いいね」
「ふふ、意味分かる?」
「わかんない」
「だろうね」
「教えてよ」
「…今度会うとき教えるよ」
「………約束だよ」
「うん、約束」
「破ったら死刑だからね」
「それはやだなあ」


20110108

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