くるくるとワンピースの裾を掴んで、さあ踊りましょう。優雅とは言えない私の踊りでも、好きと言ってくれる人が一人だけいたのよ。それはとても綺麗な朝焼けより美しい髪を持った、ロクスケと言う人なの。ニッポンに住んでいるんだけど、ロクスケは私のいる国に遊びに来たんですって。そして、そこでボロボロになったワンピースで踊っている私に近づいてきて、同じくボロボロになった空っぽの缶にお金をいれてくれたの。それもたぁくさん!私、吃驚しちゃって「こんなにたくさん、貰えないわ」って遠慮したのにロクスケはムスリとした無表情ではないのにそれっぽい顔で「やる。俺には金が有り余ってるから」とムカつくことを言ったの!まったく失礼しちゃう!まあそんな出会いで、私は少しだけ裕福な生活がおくれているんだけど。
 
ロクスケは毎日のように、私が踊っている場所までくるの。ロクスケがいる家までには結構な距離があるのに。何故来るのと尋ねても返事をせずに、お金だけおいて帰っちゃう。まったく変なヒト。ニッポン人は敵だってみんなは言うけど、ロクスケは違う気がするから私はもう何も聞かずに、ただ躍り続けた。センソウがなくなるように。

それでもセンソウはなくなりやしない。私のダイッキライなセンソウは寧ろ、日に大きく広がっていく。みんなセンソウがキライに決まってるのに、何故何も言わないの。「言っても聞いちゃくれないからだよ、ミク」でもおかしいわ、パパ。私がそう言うと、パパはにっこり笑った。
「大丈夫だよ、ミク」
パパは次の日、兵士に連れていかれた。戦うんだって、ニッポン人と。もしかしたらロクスケの家族も殺しちゃうかもしれない。ああ、想像したら悲しくなっちゃった。
今日はロクスケと会うのはやめようかしら。




ロクスケに会うのが日課になっていたから、会わないなんてできる筈もなく、私はいつものようにボロボロになってる空缶を持ってでかける。ママもブラザーもおうちにはいないから、イッテキマスは言わないの。
ロクスケはいつもの場所にいた。私は少しだけ体が固まるのがわかるけど、すぐにロクスケがこっちをみたから、とりあえず笑ってみた。
「物好きね、アナタ」
「勝手に言ってろ」
「ねぇ、私ね…センソウがキライ」
あっさりとでてきた言葉に、ロクスケは黙った。
「ロクスケはニッポンにすんでいたんでしょう?センソウはニッポンが圧倒的にフリなんでしょう?お願い、降伏して」
ロクスケは笑った。
「降伏しろって言っても聞いちゃくれねぇよ」
悲しそうに言ったから、今度は私が黙る。そして小さく笑ってみた。
 
 
 
「私ね、ロクスケが―――」

いいかけたところで目の前が爆発した。砂ぼこりが邪魔でしょうがない、身体が爆風で飛ばされて地面に叩きつけられた。
 


20101214


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