「チェレンの髪の毛、ぴょんって跳ねてるけど、直さなくていいの?」
「こういう髪型でいいんだよ」
「えー…変!ぜぇったい変!直した方がカワイイよっ」

チェレンの髪の毛を無理矢理触っていると、嫌そうな顔をしつついつの間にか力強くなったチェレンの腕によってベルの手が弾かれました。
パチンって音がしました。
まるでビンタされたときの音のようです。
チェレンは、はっとした顔をしましたが、すぐに横を向きます。
ベルは悲しそうに瞳に涙をうるうると溜めて、泣きそうに顔をくしゃくしゃに歪めますが、必死に耐えました。

「チェレン…わたしのこと、嫌いになった…?」
「………」

ベルが問いかけた言葉に、チェレンは返事をしません。その沈黙のせいで、ベルの瞳いっぱいに溜まった涙が、一気に溢れ出しました。

「ごめんね…ごめ、んね…」

うわーんと豪快に泣き出したベルに、ぎょっとしたチェレンは慌てて振り返ります。そして、いつもポケットに持ち歩いている薄い灰色のハンカチを、力強く、そして優しくベルの瞳の少し下に押し立てました。

「ベル、ごめんね…僕がいけないんだ」
「チェ、レンはっ悪くないっよ…っ」

涙が少し収まりました。ベルは泣きながらも少しだけ嬉しそうに微笑みます。

「ありがと、チェレン…」


20101210

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