君の名前を呼ぶ。


「いーの」

文字面だけでは「もういいの」と言ってるようにしか見えない、彼女がぼくに付けた記号。つまり二人称。それが脳に響くだけで僕の幸せパラメーターが少し上がる。まあそんなの戯言にすぎないんだけど。

「何、呼んだ?」
「呼んだー」
「……」
「呼んだだけ」
「だと思った」

アメリカ、テキサス州。ER3に参加している、同級生。名前も知らない彼女。名前をきいたら、「人にきく前に自分が名乗るのが基本」とか当たり前なことを言って教えてくれない。当たり前だからこそ教えてくれない。

「そろそろ教えてくれてもいいんじゃない? と思う今日この頃」
「えーやだよーいーのが先」
「なんでそんなに頑固なんだよ」
「だって好きな人の名前知らないなんて嫌じゃんかー」

……。
なんてことだ、さらりと告白された。多分。

「ぼくだって、」

とりあえず、同じ台詞を返して、それから     






君の名前を呼ぶ。

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