普通に


「ケータイ」

目の前の少女は何処となく不機嫌そうな口調でこっちを睨んでくる。なんだ。ケータイ?

「変わってる。青い」
「……あ」

不味いバレてた。うーん、死線に言われて買い換えたんだよなあ。前はこいつが選んだ黒いのだった。今は紺。蒼を避けたのはバレないようになんだけど、意味はなかったらしい。

「こっちは仕事用っちゃよ」
「前のもあるの?」
「ああ、勿論あるっちゃ」

死線の部屋のごみ箱にな笑。おい笑えねえぞ。

「ふーん」
「疑ってるっちゃね」
「うん」
「即答っちゃか」
「最近帰るの遅いし」
「悪いっちゃ、仕事忙しいんちゃよ」
「女の子の髪の毛ついてるし」
「……」

イヤな彼女だ。それだけ愛されてると考えよう、よし。

「俺にはおまえだけっちゃよ」
「……本当?」
「ああ、愛してるっちゃ。本当に」
「……」

おわ、更に黙り込んでしまった。さすがにわざとらしかったか?

「お、おい」
「あーもうバカ!」
「は、? っわ!」

がばっ! っと。いきなり抱きつかれた。……え、まさか照れてる? こいつ。

(……可愛い)

ダメだ俺末期だ。






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