彼は、ずるい。

いつの間にか見えない鎖を用意して、気づかれないようにそっちへ誘って、雁字搦めにしていく。私は、彼の側から離れられない。いつの間に私はこんなにも、彼を愛していたのだろうか。

「だから言ったのに」

心配するような言葉とは裏腹に、嘲るような声色。それさえ愛しいと思ってしまう私は、もう。

「此処にいなよ、どうせ何処にも行けないんでしょ?」

否定する要素なんてない。彼の思惑どおり、私は彼のものになるのだ。彼によってではなく、自ら。

「ね、愛してるよ」

嬉しい。それが妬ましくもあるが、今はそんなことどうでもよかった。







ペテン師が笑う頃に
(題by 梨本うい)





list


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -