参.見えるモノ

 茜色に染まりそうな空。
この空を見上げると、未だ素顔を知らない少女のことを思い出す。

「やあ、ハヤトくん」
「来てくれて感謝するよ!最近はゴースたちのイタズラは減って──」
「ハヤトくん。最近、変わったことがあったよね」
「え?」

マツバの表情が少し変わった。
周りを見渡して、何かを探してるかのような素振りを見せた。

「うん。そうだね。今、聞こえている曲といい、直接聞いた方が早そうだ」
「ああ、彼女のことか」
「君は"見えた"んだね?」
「見えた…って、確かにセキコは不思議な感じだが…」
「不思議の域じゃないと思うよ」

マツバは何かわかっているかのような口ぶりだった。
そのことを聞き出そうとしたら、セキコの姿が見えた。

「今日は、雌雄の龍が遊び戯れるさまを舞にした──」
「こんにちは。僕はマツバ。ハヤトくんから町にいるゴースがイタズラをするようになったと聞いて来たんだ。君は何か知っているかな?」
「貴方は"わかっている"わね?」
「うん。もちろん。僕は君に危害を加えるつもりはないよ」
「私も貴方に何かしようとは思わないわ。ゴースたちの件だけど、少しずつ解決しているわ。あとは──」

夏祭りの復興だかろうか。
面越しとはいえ、セキコと目が合ったような気がしたハヤトは進捗を報告すべきか悩んだ。

「いえ、何でもないわ。これは私がやらなきゃいけないことだから」
「……?」
「君の役目、だね?僕たちに何か手伝えることはあるかい?」
「夏祭りの復興。ただそれだけよ。それと神社に近づかないこと。道が危なくなってるからね」
「……わかった。僕も協力しよう」
「ありがとう。話が早い人がいてよかった。それじゃあ、また今度」

日が沈む前までがセキコと会える時間。
空はすっかり彼女の髪色と同じくらい茜色に染まっていた。

「マツバ?」
「ハヤトくん。彼女の様子がおかしくなったらすぐに連絡するんだよ」
「わかった。すぐにするよ」
「キキョウの夏祭り……何か資料がないか探してごらん。きっと参考になると思うよ」
「ありがとう!マタツボミの塔にいる坊主に話を聞いてみるよ!」

セキコもいなくなり、マツバの助言を聞いたハヤトは早速マタツボミの塔へ向かって行った。
彼の後ろ姿を見て、まだ大丈夫だろうと思った。

「まだハヤトくんには悪影響ないようだね。……セキコちゃん、あのままだと少し心配かな」

茜色に溶け込むような少女。
セキコがいた場所の地面に触れて、表情を曇らせた。



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