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嵐のような少女
 ヒウンシティで偶然会ったマジュという少女とジョウトの三聖獣と別れたジルチ達はライモンシティに来た。そこでプラズマ団の魔の手から育て屋さんを救った時に逃げ出した団員を追いかけ、テーマパークのエリアへと向かった。
そしてジルチはレッドと一旦別れて観覧車の方へと向かっていると…ヒウンで見た事のある人集りを見つけた。

「あれ?もしかして、あの人集りの中心にいるの…」

確認したくても人が多すぎるから中心にいる人物の波導を感じ取ろうと思って目を閉じた。

「写真撮ってもいいですか!?」

「お姉さん。これからランチに行かない?」

「あの…私、人探しをしてるので道を開けてくれませんか?」

その麗しい見た目に大勢の男女に言い寄せられて困った顔をするスイクンがいた。

「あ、スイクンだ。助けてあげなきゃ!」

人の姿を初めて見た時は見惚れてしまうほどだったから仕方ないと思いつつ、人集りをかき分けてスイクンの元に近づいた。

「スイク…じゃなくて、スイさん!探したよ!」

「あ…巫女ー」

「さぁ、行こ行こ!」

ジルチはスイクンの手を引いて無理矢理人集りから抜け出し、施設の端の方へ逃げてきた。

「巫女、助かりました。ここは人が多くて大変です」

「ライモンは娯楽都市だから人が多いのは仕方ないよ…。そういえば他の2匹とマジュさんは?」

人集りの中にスイクンと同じく人の姿をした2匹とそのトレーナーであるマジュがいなかった事に疑問を抱いた。ヒウンで会った時と同じ疑問を投げかけるとスイクンはため息をついた。

「ヒウンにいた時と同じ理由です…」

「あー…」

『スイクン苦労してるね』

肩に乗っていたリオルがスイクンの表情から察してしまった。

「仮に人に囲まれても2匹は頑張って抜け出せそうだから先にマジュさんを探そ?」

「そうしましょう。私の主がご迷惑をおかけしてすみません…」

「大丈夫だよ!」

「ところで、巫女の相方はどうされましたか?まさか巫女も迷子に…?」

「いや、私は違うよ?レッドとは一旦別行動してる」

『バトル施設を見に行ったんだ!』

別行動している理由を聞かれる前にリオルが別の理由を言って話題をそらした。しばらくテーマパーク内を歩いていると、明らか様不機嫌なオーラを出すエンテイとライコウがベンチに座っているのを見つけた。

「エンテイ、ライコウ。ここにいましたか」

「あぁ」「おう」

「……(うわぁ…初めて会った時以上に機嫌悪い)」

気に食わない事があったら間違いなく炎と雷を出しかねないと思いながら2人を見ていると、人混みの間に黒いリボンを付けた金髪の少女−マジュを見つけた。

「見つけた!!」『ぼく、先に追いかけるよ!』

リオルはジルチの肩から飛び降りてマジュに向かって駆け出した。人混みの間をすり抜けてようやくマジュの元へ辿り着いたリオルはマジュの手に飛びついた。

『待って!』

「ん?何だ?ってお前は…」

『ジルチとスイクン達が探してるから動かないで!』

「そうなのか?そいつは悪かった!」

歩くのをやめてもう片方の手に持っていたクレープを食べ始めたのを見てリオルは掴んだ手を離した。

『……?(この人、何でぼくの言ってることわかったんだろ?)』

「マジュ!」「マジュさーん!!」

「お?スイクンとエンテイにライコウ!それに海の都の巫女さん…ジルチだったな!」

「半分合ってますが間違ってます。水です。水の都です」

リオルの後を追ってきたジルチ達はマジュの元へと駆けつけた。

「ったく。目を離したらどっか行きやがって!マジュを探しに行ったらまた香水臭い女共に囲まれたじゃねえか!」

「おーご苦労だな?」

「「誰のせいだ!!」」

エンテイとライコウのツッコミに笑いそうになったのをジルチは必死に堪えた。

「ちょうどよかった。ジルチ!あたいとバトルしないか?」

「えっ」

「こら!マジュ!巫女にあなたを探すのを手伝ってもらったのですよ。これ以上迷惑をかけてはいけません!!」

ガミガミとスイクンの説教が始まり、マジュは近くの観覧車を眺めていた。

『スイクンってお母さんみたいだね』

「そうだね…」

「そりゃ育て親だからな!」

「育て親!?」

リオルの言葉に反応したマジュはさらりと衝撃的な事を言った。

「これには訳あってな」

エンテイの雰囲気から何らか深い事情があると思ったジルチはこれ以上聞くべきではないと思って黙った。

「そーいえば、ジルチ。スイクンの話じゃホウエン地方にいるって聞いてたけど何でイッシュにいるんだ?」

「確かに私もそう思ってました。何故イッシュ地方に来たのですか?」

マジュの説教に諦めたスイクンはその質問と同じく以前から気になっていた。他の2匹も同じような反応を見せた。

「私は…」

故郷を滅ぼす要因になった人物を追って来たなんて言ったらスイクンは心配するかもしれない。下手な事を言って彼女達を巻き込むわけにはいかないと思って、ジルチは嘘をつく事にした。

「オーキド博士の研究で他の地方のポケモンについて調べに来たの!イッシュ地方には見た事がないポケモンがいっぱいいるからいろんな発見があると思って」

「へー!すごいな!」

「マジュも見習ってバトルやポケモンの事を勉強してください。それに今のままでは巫女に勝てませんよ」

「何ーっ!!?だったらそこのバトルトレインって所で特訓だー!!」

「あ!待て、マジュ!」

「全く。マジュはすぐに走るから追いかけるのが苦労する」

「では、巫女。またどこかで会いましょう」

「うん。マジュさんに次会ったらバトルしようって伝えといて」

「お任せください。それまでに立派なトレーナーに育てますので」

スイクンは柔らかく微笑んで嵐のように走っていったマジュとエンテイ達の後を追って走り出した。

「…スイクンの笑顔って綺麗だね。水晶のように透き通ってる感じがする」

「うんうん!あと、マジュってスゴいよ!ぼくの言ってることわかったんだ!」

「え?本当?」

「うん!あのNって人と違って何だかジルチと同じ感じがした!」

「……」

マジュがリオルの言葉に反応して話しかけたのを思い出した。

「私と同じ感じって…まさか、ね」

自分と同じだったら彼女が人とポケモンの間に産まれた人という事になる。もし、そうだとしたら奴らに狙われる可能性が出るかもしれない。

「スイクンに一言言った方が…いや、余計な事を言ったら不安になるかもしれない。それに…苦労してる3匹にこれ以上心配事を増やしたら大変そう…」

『ぼくもそう思う』

「それに皆に危害が及ぶ前に奴らを壊滅させたら大丈夫だよね!さて、プラズマ団探しの続きをしなきゃ」

『観覧車に乗ろ!』

「そうだね」

ジルチは少し離れた場所にある観覧車へ向かって歩み出した。今度マジュ達に会う時はプラズマ団の事が解決して、バトルやゆっくりと話がしたいと思った。
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