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超高速鉄道ジャック事件
 TMVはミアレシティとキナンシティを結ぶ超高速鉄道。キナンシティにあるバトルハウスで息抜きをしたリシアはミアレへ帰る途中だった。

「………」

20連勝を達成し、少し満足していた彼女はうたた寝をしていると列車が急に速度を落とした。

「……?」

しばらくすると列車の速度は上がったが、前の車両から複数の足音が聞こえ車内が騒がしくなった。前の車両と繋がる扉が勢いよく開かれ、男は大声で宣言した。

「このTMVは俺達が占拠した!お前ら乗客は人質だ!!」

「……え、嘘やろっ?!」

リシアは夢心地から覚めて状況を確認する為に座席から少し立ち上がった。

「……(乗客はうちを含めて5人、うちより前に座ってんのはおらへんくて―)」

3両目に繋がる扉の前にギャングが1人立っていた。特に銃といった武器は持っておらず、腰にはボールが2つあるだけだった。リシアは今乗ってるTMVが何両編成だったか思い出しつつ腰にあるボールを掴んだ。

「……(ギャング1人ならいけるな)」

「おいっそこのお前っ何してやがる!!席に戻れっ」

リシアは座席から立ち上がって通路側に出るとギャングが気づいた。

「うちが戻る座席は寝心地悪くなったから安眠を妨げる原因を探しに行くねん。先ずはアンタをぶっ倒す!」

「女1人が俺に勝負挑むなんていい度胸してるじゃねえか!いけっワルビル!!」

「それはこっちのセリフや!うちに喧嘩売るって事はそれなりに覚悟しいや!デンリュウ、ボッコボコにするで!!」

 リシアの宣言通りにギャングはボッコボコにされた挙げ句、仲間に助けを呼ぶ前にハヤトカッター(手刀)で気絶させられた。

「ふぅ…!いっちょあがり!次は隣の車両やな」

リシアが隣の車両の扉を開けると…目の前に茶髪で、紅く煌めくルビーの瞳を持つ女性がいた。一目見て、かなりのやり手だと察した彼女は警戒してボールを片手に持ち、2歩下がった。

「…姉ちゃんもコイツらの仲間なん?」

「え?」

警戒気味に言われた質問に彼女は一瞬疑問を抱いて、どういう事か聞き返しそうになったが、扉近くに寝転がっているギャングを見て「あぁ…」と呟いた。

「あたしは仲間じゃない。あなたは?」

「ご覧の通り安眠を妨げたもんをぶっ倒したとこやで」

『パルッパルッ!!』

デンリュウがリシアの服を引っ張って前の車両に向けて手を振った。

「せやな、他のギャングを倒しにいこか」

「ちょっと、1人で!?」

「え?せやろ?」

「一般人を巻き込むわけには…」

「いやいや、姉ちゃんも一般人やろ?」

お互い"一般人"と言ったものの釈然としない顔をしていた。それもそのはず、リシアとその女性は"一般の"トレーナーではないからだ。

「とにかく、あたしがギャング達を倒すからあなたは車両に残ってて」

「いーや!うちは残らんで!安眠妨害された恨みもあるし、乗客を助けなあかん!」

「助けたい気持ちはわかるけど相手はギャングよ?どんな手を使ってくるかわからない!」

「卑怯な手を使われても勝つ自信はあるで!な?デンリュウ」

『パル!』

リシアの言葉にデンリュウは自信満々な返事をして飛び跳ねた。

「それにギャングのやりそうな手口くらい知っとるし、やられる前にやれってあるやろ?」

「そうだけど…」

「もし姉ちゃんがうち1人でギャング相手にするの不安やったらタッグを組めへん?」

「タッグを?」

「左手のそれ、キーストーンやろ?お互いメガシンカの使い手やったら組むのもありやと思わへん?」

「!」

リシアは袖を巻くって右手首にあるメガブレスレットを見せた。

「どうする?メガシンカ使いの姉ちゃん」

彼女は考えているのか次の車両の扉、寝転がっているギャング、リシアの右手を順々に見ていた。

「……」

最後にデンリュウとリシアを見て頷いた。

「いいわ!あたしはヒロコ」

「うちはリシア。よろしく頼むで」

お互いに自己紹介をして握手を交わした。リシアは心強い味方を得てこの事件は解決したも同然だと確信した。

「それじゃあ、あたしがいた3両目のギャングは倒したから2両目に行くよ!」

「りょーかい!ヒロコさんと一緒に行くで、デンリュウ!」

『パルッ』

3両目のギャングはヒロコによって倒されていたから2両目へ移動した。2人は車内を見渡すと、乗客は扉が離れた真ん中の座席に集められているのを確認した。

「な…っ!?人質が何してやがる!」

「人質?勘違いせんとって!」

「お前達の悪事を止めにきた!!」

「俺達の邪魔をしようってか!いけ!スピアー、ワルビル!!」

「いけっバシャーモ!」「ちゃちゃっと片づけるで!デンリュウ!」

4匹が対峙するとギャングがポケットから何かを取り出したのを見て2人は警戒した。

「この計画の為に用意された物の出番だぜ!スピアー、メガシンカ!」

「何!?」「なんやて!?」

ギャングはキーストーンを掲げるとスピアーの身体が眩い光を放ち、姿を変えた。両手にあったドリルの他にも2本追加され、鋭さが増していた。

「へぇ…最近のギャングはメガシンカを使うようになったんやな…」

「感心してる場合じゃないでしょ!相手がメガシンカを使うなら…」

「うちらもメガシンカせなあかんな!!」

ヒロコはメガクロスがある左手を、リシアはメガブレスレットがある右手を上に挙げた。

「さらなる高みへ!バシャーモ、メガシンカ!」

「雷を纏い、新たな力は竜となりてその姿を現せ!メガシンカ!」

2匹はメガストーンから七色の輝きを放ってメガシンカをした。バシャーモの手首から炎の帯が揺らめき、デンリュウは赤い玉に電力を溜めて発光させた。

「スピアーは任せるで!ワルビルはこっちが相手するからっ」

「わかった!バシャーモ、スピアーにとびひざげり!」

「デンリュウ、ワルビルにりゅうのはどうや!」

バシャーモは自慢の脚力で一気にスピアーの前に詰め寄って蹴り飛ばした。

「そのままブレイズキック!」

バシャーモの速さを活かしたコンボが決まり、隣にいたリシアは感嘆して見ていた。

「やっぱ速さあると一気に攻め込めるよなー。あ、毒には気いつけや?モモンの実持ってるからいつでも言ってな!」

「ありがと。…って余所見してていいの?」

「いけるで?ほら」

ヒロコはリシアが指をさした方向を見るとワルビルが気絶していて、その隣でデンリュウは欠伸をしていた。りゅうのはどうを放った後、すぐにほのおのパンチで殴りいってワルビルを倒していた。メガバシャーモに気を取られていたギャングはワルビルが戦闘不能になっていた事に気づかなかった。

「げ…!戻れワルビル!」

「な?」

「いつの間に…。あたし達も負けてられない!バシャーモ、フレアドライブ!!」

「あぁ!次は俺のメガスピアーがっ!!」

フレアドライブをまともに食らったメガスピアーはメガシンカが解けて床に伏せた。ギャングは舌打ちをして悔しそうにスピアーをボールに戻した。

「…ホンマにアンタの?」

「え?」

「アニキから貰ったから俺のだ!!」

「ふぅん。………デンリュウ」

『パル』

「は、離せ!何をしやがる!!?」

デンリュウはギャングを羽交い締めにするとリシアはギャングに近づいた。

「で、そのアニキはどこで手に入れたん?」

「知らねぇよ!知っててもお前なんかに教えねぇ!」

「…アンタに聞くよりそのアニキに聞いた方が早そうやな」

「アニキのポケモンはすっげぇ強いんだぜ!お前らに勝ち目はないぜ!」

「よーし、今からそのアニキをこてんぱんにしたるからアンタは寝ときっ」

―ガンッ!!

鈍い音がしたと思えばデンリュウがギャングの後頭部に頭突きをかましていた。

「ガハッ!!」

「今の音…痛そうね」

問答無用で気絶させられたギャングを床に捨てて、デンリュウはボールの中へ戻っていった。一連の流れを静かに見ていたヒロコはリシアの言葉である事に気づいた。

「もしかして、ギャングが持っていたポケモンは元々誰かのポケモンだった?」

「スピアーがその可能性高いで。ほな、親分がおる先頭車両に行こか!」

「ええ!」

2人は先頭車両へ行くと乗客は1人もいなく、リーダーらしき男1人だけだった。

「アイツが」「リーダーね」

「そうだ!警察に捕まった仲間を解放してもらう為にトレインジャックをしたが…人質が調子に乗りやがって!!」

「ホンマごめんやで?乗客と車掌さん助けなアカンからアンタは仲間と一緒に捕まってもらうで!」

「はっ!冗談じゃねえ!お前らはオレの最強のポケモンの前に敗れるんだな!いけっガブリアス!!」

「ガブリアス!」「?!」

圧倒的な強さを持つポケモン、ガブリアスの登場に2人の表情は引きつった。

「ちょっと、そのガブリアス…研究所の子とちゃうか!?」

「えっ!?もしかしてプラターヌ博士の?」

「そうだ!計画実行前に研究所から盗んできたポケモンと―」

リーダーはポケットからキーストーンを取り出したのを見てリシアは叫んだ。

「あかん!!そのガブリアスをメガシンカさせたら…!!」

「ガブリアス、メガシンカだ!!」

今までのギャングと同様にメガシンカをさせたが…

「ガブリアス!りゅうのはどうだっおい!!命令に―」

『ガーッ!!』

「あ!!」「あちゃー…」

メガガブリアスは指示を聞かずに暴れだし、後ろにいたリーダーを突き飛ばした。壁にぶつけられた衝撃でリーダーが気を失ったのを見て、リシアはため息をついた。

「やからあかんって言うたのに……」

「ガブリアスがメガシンカの影響で暴走してる!止めなきゃ!」

「せやな。暴れた拍子に脱線されたら困るし、荒業になるけど…ゴメンやで 」

リシアが2つのボールを投げてデンリュウとメタグロスを出すと右手を構えて深呼吸をした。

「煌めけっ絆の力!メガシンカッ!!」

デンリュウとメタグロスの脚に付けているメガストーンがキーストーンと共鳴して七色の光を放った。

「2匹同時にメガシンカ?!」

2匹同時のメガシンカを目の前で見たヒロコは驚いていた。

「うちの十八番ってヤツやで」

「カロスはいろんなメガシンカ使いがいるのね」

「うちみたいなヤツはそうそうおらんけどな?」

メガデンリュウ、メガメタグロスとメガバシャーモが暴走するメガガブリアスの前に立ち塞がった。

「火力はアレやけど速さはバシャーモの方が上やな!ガブリアスには悪いけど一気にいくで。サイコキネシス!」

「バシャーモ、とびひざげり!」

メタグロスのサイコキネシスでガブリアスの動きを封じた隙にバシャーモがとびひざげりでダメージを与えた。このまま叩き込もうと思っていたが、ガブリアスが力ずくでサイコキネシスを破り、口を大きく開けた。

「デンリュウ!ひかりのかべや!!」

ガブリアスが放ったりゅうのはどうはひかりのかべで軽減されたものの、威力は凄まじいものだった。

「あっぶな…!ひかりのかべがなかったらぶっ飛んどったわっ」

「お陰で助かったわ!」

「ええよ!もう1度やるでっ次こそ大人しくしてやーっ」

サイコキネシスを放つ前にガブリアスはメタグロスに攻撃をしかけきたが、バシャーモのまもるによって防がれた。ガブリアスが攻撃対象をバシャーモに変更した時にはサイコキネシスに捕らわれていた。

「よっしゃ!今や!」

「ブレイズキック!」「ほのおのパンチ!」

バシャーモとデンリュウの同時攻撃にガブリアスのメガシンカが解けて床に膝をついた。その隙にリーダーの手元にあったガブリアスのボールを取りにリシアは飛び出した。

『ガゥ…ッ!!』

「リシア!」「!!」

ガブリアスが最後の力を振り絞ってバシャーモとデンリュウを押し退け、メタグロスを踏み台にしてリシアに鋭い鎌のような爪を降り下ろした。

「……っ」

やられた!と思っていたリシアは恐る恐る目を開けると、目の前にはガブリアスの腕を掴むバシャーモの姿があった。

「間に合った…!」

「ヒロコさん、バシャーモ……ホンマおおきに!ガブリアス、気持ちはわかるけど研究所へ帰るで」

リシアはガブリアスをボールに戻し、リーダーの手にあったキーストーンを取ってポケットにしまった。

「これらは返してもらうで…っと」

「これで事件は解決ね」

「せやな!車掌さんにギャングをとっちめた事言わんとなっ」

リシアは車掌のいる扉をノックして入った。

「邪魔するでー」

「邪魔するんやったら帰ってー」

「はいよー」「え…?」

リシアは扉を閉めて―

「なんでやねんっ!!!」

ツッコミを入れながら勢いよく扉を開けた。

「そのツッコミ……コガネのモンやな?」

「そのボケをする余裕があるなら大丈夫そうやな」

「もちろん!ケガもしてへんし平常運転しとるけど…ギャングのせいでダイヤル乱れたわ」

「それはしゃあないで。んじゃ、ミアレまで安全運転頼むでー」

「任せとき!」

リシアは再び扉を閉め、近くの座席に座ってポケットからお菓子を取り出した。

「ミアレまで着くのにまだ時間あるから座っとき?状況が状況やったし疲れたやろ?」

「そうね」

ヒロコがリシアの隣に座ると目の前にカラフルな紙に包まれたお菓子を差し出された。

「アメちゃん食べる?」

「ありがと。んっ美味しいー!」

「やろ?」

2人は懐かしい味のする飴玉を口の中で転がしながら雑談を始めた。

「ほぉん…ヒロコさんGメンやねんな?」

「そうよ。今は修行中だけどね」

「一目見た時にただ者ではないオーラを感じ取ったけど……通りで強いわけや」

「それを言うならリシアもね。本当に通りすがりの作家か疑いたくなる実力と、2匹同時のメガシンカをするなんて普通のトレーナーができる芸当じゃないわ」

「まぁいろいろやってたら身についた技術やからな?」

「そうなの?」

[―車内でのトラブルは勇敢なトレーナーさん達によって解決したんで安心してな!ってなわけでミアレシティ到着まで今しばらくお待ちください]

乗客に向けられたアナウンスが流れていたが、2人はバトルや手持ちの話に夢中になっていた。

 キナンからミアレ行きのTMVがジャックされ、騒然とする駅構内。カロス警察はギャング達の要求を呑むか呑まないかで悩み、緊迫した雰囲気が漂う駅にそのTMVが到着した。
扉が開き、現れたのは―

「全く、息抜きでキナン行ったのにトラブルに巻き込まれるとか思いもせんかったよなー?」

「トレインジャックにポケモン強盗。とんだ迷惑なギャングね」

リシアとヒロコに首根っこを引きずられているギャングのリーダーだった。

「………」

「カロス警察が応援に来てくれてたのね」

「お勤めご苦労さん!コイツがトレインジャックしてたギャングのリーダーやで。中に仲間が3人寝転がってるから捕まえといてや?」

「あ、はい……ご、ご協力ありがとうございます……?」

思わぬ展開にカロス警察達は唖然としてて、その反応に2人は顔を見合わせてクスリと笑った。
まさか女性2人で事件解決するなんて思わないよね、と

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