43.幼馴染
 ―フスベシティ・ポケセン
ジルチは集中治療室での治療を終えてから病室のベッドで3日ぐらい眠っている。レッドは彼女の左手を握って目が覚めるのを待ち続けていた。

「こんこーん…ってレッド。お前、ちゃんと寝てるのか?」

「………」

肩にジルチのイーブイを乗せたグリーンがリンゴの入った籠を持って入ってきた。扉の近くにあった椅子を持ってきてレッドの隣に座った。

「よいっしょ、と。…もう3日目だな」

「うん…でも、少しずつ回復してる。僕が旅の話をしたら手がちょっと動いたり表情が柔らかくなった気がする………」

「そうか。ジルチが目が覚めたらまず何するんだ?」

「………」

「レッド?」

「………」

返事がないと思ったらレッドは座りながら寝落ちていた。

「シロガネ山から下りて3日間寝てなかったらそうなるよな。…しゃあねえからブランケットを掛けてやるか。お前が風邪を引いたらジルチも心配するしな」

病室のクローゼットの中にあるブランケットを取り出してレッドの肩に掛けた。世話のかかる幼馴染だから自分が1番しっかりしないと苦労するとグリーンは思った。

『ブィー』

「ジルチが心配か?」

肩に乗っているイーブイは耳を垂らして頷いた。

「ジョーイさんの話じゃ呼吸が安定して体力が戻ったら目が覚めると思うって言ってたから大丈夫だろ。さてと、オレは飯でも食いに行くか…。レッドが寝ちまったからピカチュウも一緒に来いよ」

『ピカ!』

リンゴの入った籠をベッドの横の机に置いて、レッドのピカチュウを連れて病室を出た。

「あのリンゴを渡してきたゲンガーとピジョット…。誰かの手持ちだった気がするけど誰だったか忘れちまったな」

仲良さげな2匹だったからその持ち主のトレーナー同士仲がいいってのがわかる。でもカントーのジムリーダーには心当たりがないからジョウトのジムリーダーかトレーナーかもしれない。

「あの中にジルチ宛の手紙入ってたし、アイツの知り合いだろうな」

飯食ったらまたジルチとレッドの様子を見に行こうと考えていたらピカチュウが頭の上に乗ってきた。

「ちょ、お前なぁ…」

『ピーカー!』

「腹が減ったから早く食堂へ向かえって?…わかった!わかったから人の頭の上で10万ボルトを出そうとするなっ!!」

野生のピカチュウなら笑っていられるが生憎、頭の上にいるのはレッドのピカチュウだ。正直、笑えない。小走りで食堂へ向かっているとヒビキが廊下でウロウロしているのを見つけた。

「お、ヒビキじゃん。今から飯を食いに行くけどついてくるか?」

「あ!グリーンさん。いいっすよ!それとジルチさんは大丈夫でしたか…?」

「まだ目が覚めてないが寝ずに看病していたレッドの話じゃだいぶ良くなってるってよ」

「よかった…!!」

「今は待つしかないから飯食ってゆっくりしようぜ。じゃないとピカチュウが我慢できなくていつ10万ボルトを放つかわからねぇ…」

「え…ちょっと、それ本当ですか?」

『ピィ〜カ?』

ヒビキがピカチュウを見るとこれはまた愛想よく可愛く鳴いて誤魔化してきた。それでもヒビキの位置から見えない尻尾をさり気なく頭を叩いてくるからタチが悪い。肩にいるイーブイも何か言って欲しいくらいだったが、ここは黙って食堂へ行くしかない。

「フスベは漬物ステーキが有名らしいですよ!」

「漬物ステーキ……?」

妙な食べ物が有名なんだなって思いながらヒビキと一緒に近くの食堂へ向かった。
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