1番道路でそれぞれの旅が始まって、街や道中で会ったレッドにバトルを挑む日々が続いた。バッジを集めて誰よりも強くなったオレは、ついにチャンピオンの座に就いた。
「よおーッ!レッド!」
いつ来るかと思っていたら、意外にもすぐにレッドはやって来た。
「レッドも来たか!……ハッハッ嬉しいぜ!ライバルのお前が弱いと張り合いないからな!オレは図鑑集めながら完璧なポケモンを探した!いろんなタイプのポケモンに勝ちまくるようなコンビネーションを探した!」
今までの旅や経験を思い出しながら話していると、無意識に拳を握りしめていた。
「……そして今!オレはポケモンリーグの頂点にいる!レッド!この意味がわかるか?」
「グリーンがチャンピオンになってるのはわかっていた!バトルだ!!」
「そうこなくっちゃな!!」
ライバルと認めているレッドはオレの考えたコンビネーションに対抗するように次から次へとポケモンを交代したり、そのポケモンにとって自信のある技で対抗してきた。互いのポケモンが技と技、拳と拳をぶつけ合うそのバトルは手汗を握りしめ、気持ちが昂ぶるほどだった。出し惜しみをせず、全力で戦ったが−
「……バカな!ホントに終わったのか!全力をかけたのに負けた!せっかくポケモンリーグの頂点に立ったのによう!」
「………」
「もう……!オレ様の天下は終わりかよ!……そりゃないぜ!」
どうしようもないくらい悔しかった。今までレッドに負けたことはあったが、これほど悔しいと思ったことは一度もなかった。
「なぜ……なぜ、負けてしまったんだ……。オレの育て方……間違ってなんかいないはずなのに。しょうがないぜ……。お前がポケモンリーグ新チャンピオンだ……!……認めたくねーけど」
でも、実際にバトルして勝ったのはアイツで負けたのはオレだ。共に戦ったポケモン達に笑顔で喜び合う姿を見てるとじいさんがやって来た。
「レッド!」
「博士!」
「とうとう勝ったな!ポケモンリーグ制覇!心からおめでとう!初めてピカチュウとヒトカゲを貰って、ポケモン図鑑集めに出かけた頃と比べると逞ましくなったな!……いやいや!レッドは大人になった!」
その言葉にレッドは大きく頷いたのを見たじいさんはオレの方に向いた。
「グリーン……!……残念だ!お前が四天王に勝ったと聞いて、ここに飛んできたのにポケモンリーグに着いてみたらお前は負けとった!グリーンよ……!何故、負けたのか分かるか?」
「……わかんねーよ」
「………。お前がポケモン達への信頼と愛情を忘れとるからだ!それではどんなに頑張ってもトップには立てんぞ!」
「!!」
「レッド!ポケモンリーグを制覇したのは1人の力ではないことを……お前は分かっとるな!レッドとポケモンの絶妙なコンビネーション!見事だったぞ!それでは……レッド!私についてきなさい!」
少し前にオレが入った場所へレッドとじいさんが向かっていったのを見届けて、オレはリーグを去った。
一からポケモンを鍛え直す為にマサラタウンから旅立つ時にじいさんから呼び出しを食らった。
「グリーンよ。お前さんはジムリーダーになるつもりはないか?」
「ジムリーダー?いいや、ルールとかに縛らられたくねーから興味ない」
「そうか……」
あの時、じいさんはオレの返答にやや困った表情をしてたが予想はしていたと思う。
カントーを一通り旅をしてトキワに戻ってきた時に、ロケット団がトキワジムを隠れ家にしていた話を聞いた。今はロケット団は解散して、ボスでもあったサカキが行方をくらましてジムリーダーが不在の状態だった。
「まさかジムが隠れ家にされてたとは……」
オレがジムバッジを手に入れた時はそんなことを知らず、全く気にもしなかった。カントーの8個目のジムバッジを管理するこの街にジムリーダーが不在のままなのが気になった。
「……よし、決めた!」
ピジョットに乗らずに1番道路を駆け下りて、じいさんの研究所へ飛び込んだ。
「おぉ、グリーン!旅から帰ってきたんじゃな」
「じいさん!!トキワジムはオレが面倒見る!色々縛らられたくねーから断ってきたけど……覚悟決めたぜ。オレはジムリーダーになるよ」
「うむ。いい覚悟だ。ジムリーダーになることもいい経験になるだろう」
しばらくして、ジムリーダーを任されてからトキワジムは大賑わい。今までジムリーダーが不在でジムに挑めなかったトレーナー達が訪れてきたからだった。
いろんなトレーナー達とバトルをして手ごたえを感じ、あの頃の自分と違って随分と成長した。それからレッドに何度か再戦しに行っては、こてんぱんにされての繰り返しをしてた。
ある日、チャンピオンの部屋で雑談してる時にジョウト地方へ旅立ったジルチのことを話題に出した。
「レッドに負けてなかったらチャンピオンのオレがジルチとバトルをして、勝った時に告るつもりだったのによ。ったく、チャンピオンだけじゃなく、ジルチのことも諦めなきゃいけねーなんて……悔しいぜ」
「負けるつもりはなかったからね。それに僕が……ジルチを守るから、もっと強くならないと」
「……?何だよ。アイツ、そんな弱くねーだろ?オレ達といい勝負できるくらいだからそこらのトレーナーに負けるはずがないぜ?」
「それでもだ」
「ふーん?ま、ジルチに負けたくねーし、オレも鍛え直してレッドからチャンピオンの座を取り返す!待ってろよな!!」
「………」
その会話をした数週間後、レッドはチャンピオンの座をワタルに渡して近くのシロガネ山に籠った。自然の厳しさ、気性の荒いポケモンが棲みついているから許可の出たトレーナーしか踏み入ることが許されていない。そんな場所を修行場所にしたアイツが正気の沙汰じゃないと思いつつ、定期的に様子を見に行ったら食料に困っていた。
「ちゃんと飯食ってんのか?」
「水と……食べれそうな木の実食べてる」
「それ、ちゃんと食ってねえからな。シロガネ山の麓にポケセンがあっただろ」
「降りる暇があったら野生のポケモンとバトルする」
「いやぃゃ、降りながら戦えよ……。しゃあねえからオレ様が食料を配達してやるよ」
最初の1年は吹雪の中、頂上まで行って食料を届けてたが、正直言って頂上まで行くのが面倒になってきた。ポケギアという連絡のできる機械を手に入れたから丁度いい機会だと思ってレッドの分も用意した。
「いいか?コイツがあれば時間も日付もわかる。今日から2週間後、麓のポケセンに来いよ!」
「え、何で?」
「ジムリーダーやってっから毎日大変だぜ。うっかりカレンダー見なかったら忘れそうだしよ。仮に忘れてもお前がポケセンまで降りてくれたら連絡できるだろ?」
「うん」
いや、うん。じゃなくて、たまには家に帰れよ。と心の中で突っ込んだ。実際、それで帰るような感じもなかったから、こうして様子を見に行ってるわけだ。
「それじゃ、また今度な」
『ピカ!』
レッドの代わりにピカチュウが返事してきたけど、その目はその辺にいる野生のポケモンより何倍の鋭さを潜めていた。またバトルする機会があったら、あのピカチュウがどれだけ化けてるのか想像するだけでもゾッとする。
シロガネ山からトキワジムに戻ってきて天井を見上げた。
「しっかし、さぁ……このジムのデザインどう?オレ、悪役みたいじゃねー?作り直そうかなあ?」
ジルチが来てこのジムのデザインを見たらオレのセンスを疑われかねない。どんな所でもオレの強さは変わらなくても、いつか改装しようと決めた。
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