外伝.緋色の記憶
 マサラタウンでそれぞれの旅が始まり、僕はグリーンと競いながらジムバッジを集めて図鑑を埋めていた。そんな日々を過ごしているとロケット団という悪い集団がポケモンに酷い事をしたり、町の人を困らせているのを知ってからその人達に何度もバトルをしかけた。
タマムシシティのゲームコーナーでロケット団のアジトを見つけ、街から追い出す為にバトルをしてたら話し声が聞こえてきた。

「本当に人の子がポケモンの技を…?全く信じられんな」

「でもこの資料が本当ならとんでもない発見になるし、我々の研究が捗るかもしれない」

「……(ポケモンの技を使う子って…まさか)」

ロケット団に所属する研究員の会話が気になったからバトルをしかけ、研究員が持っていた資料を見させてもらった。

「…やっぱりジルチのことだ」

「もう気が済んだろ?子供はサッサと帰ってママのご飯を食べるんだな」

「………」『ピッカ!!』

「ヒィ!!」

ピカチュウが床に軽く電撃を当てたら研究員達は慌てて逃げていった。この資料がロケット団にあるという事はいずれジルチの身に危険が迫る。そうとなればロケット団のボスを見つけて倒すと決めた。

「結構地下に来たけどボスっているのかな…」

『ピィカ 』

このアジトの片っ端からしたっぱを倒していくと明らかに違う雰囲気の男を見つけた。

「ねぇ、これ何?」

「ほほぅ!こんな所までよく来たと思えばその資料を見たのか?そこに書かれているジルチという娘は特殊な力を持った人間と珍しいポケモンの間に産まれた子だ。初めて知った時は驚いたとも!そしてその力を軍事的に活用する事を思いついた」

「ジルチの力を…絶対に悪用させない!」

「世界中のポケモンを悪巧みに使いまくって金儲けするロケット団!私がそのリーダー、サカキだ!私に歯向かうなら痛い目に遭ってもらう!」

サカキとのバトルになって僕はジルチを守りたい一心で挑んだ。彼女の力は人とポケモンを助ける為にあるものだと思っているからロケット団に悪用させたくなかった。
そして、バトルは僕の勝利で終わったけど、多くのトレーナーと戦ってきた経験からサカキはまだ実力を隠しているのがわかった。そんな感じがする戦い方をしてきたから油断はできないと思った。

「……君はとても大事にポケモンを育てているな。そんな子供に私の考えはとても理解できないだろう
……!ここは1度身を引こう!」

「待て!ジルチに手を出すな!」

「君とはまたどこかで戦いたいものだ……!」

サカキは意味ありあげな言葉を言って、その場から立ち去っていった。それからも僕達はジムバッジを集めてはグリーンとバトルをしたり、共に成長していき、最後のトキワジムへと挑んだらジムリーダーがいる場所にサカキがいた。

「サカキ!!」

「ははははーッ!ここは俺の隠れ家だ!ロケット団復活の日まで、このジムで態勢を立て直すのだ!しかし……君に見つかってしまってはしょうがない!今度は手加減なしだ!」

「望むところだ!!」

「では……今一度!最強のトレーナー、サカキの腕前を見よ!」

サカキが繰り出すポケモンは地面タイプが多く、技も攻撃力があるものだから油断はできない。倒しては倒されるの繰り返しが続いて、やっと最後の1匹を倒した。

「はーはーッ!激しい戦いだった!君の勝ちだ!」

「…そうだね」

「今……その証にグリーンバッジを渡そう!グリーンバッジさえあれば君が一人前のトレーナーになった証だ!これでポケモンリーグに挑む事ができるだろう。この技マシンは……!ポケモンリーグへ挑む君へ餞別だ!技マシン27はじわれだ!じわれに誘い込まれた敵は一撃でダウンする最強の技だ!」

息切れしながら渡されたバッジと技マシンを受け取ってすぐにリュックに入れた。

「俺が昔……ここでポケモンジムをやってる時作った物だ……」

色々道具を作らせている印象はあったけど、この技マシンもそうなんだと思った。トキワジムで貰う物を受け取ったから長い旅をしてやっとロケット団のボスを倒したから本題に入った。

「ジルチのことを諦めろ」

「そうだな。このような負け方をしては部下達に示しがつかない!ロケット団は……本日を持って解散する!私はポケモンの修行を1からしなおすつもりだ!いつの日か……また会おう!……さらばだ!」

ジルチのことだけでなく、ロケット団も解散してサカキはトキワジムを去っていった。そんなサカキの後ろ姿を見て、次に会う時はトレーナーとして相手をしたいと思った。

「これでジルチは大丈夫だから…」

自分の旅で1番目指しているチャンピオンになる為、僕はチャンピオンロードへと向かった。ゲートで集めたジムバッジを見せて、洞窟を抜けた先にリーグがあった。
寄り道を結構したからグリーンはもうリーグに挑んでるだろうし、もしかしたら先にチャンピオンになってるかもと考えながら扉を開けた。

 四天王はジムリーダーよりも遥かに強くて今までの経験を活かしながら次々と倒していった。そして、最後の四天王ワタルを倒した。

「ドラゴン軍団が負けるなんて信じられない。レッド!これからは君がポケモンリーグチャンピオンだ!……と言いたとこだが、実は君はもう1人戦わなくてはならない!」

「!!」

ワタルの言葉にさっきバトルを終えた時に消えた炎がまた燃え上がってくるのがわかって自然と手を握りしめた。

「そのトレーナーの名前は……グリーンだ!彼は……君よりも早く!俺達四天王に勝った!今や彼こそポケモンリーグ真のチャンピオンなのだ!」

「よおーッ!レッド!」

やっぱりグリーンが先にチャンピオンになっていたから僕は笑みを浮かべた。

「レッドも来たか!…… ハッハッ嬉しいぜ!」

「グリーンがチャンピオンになってるのはわかっていた!バトルだ!!」

「そうこなくっちゃな!!」

旅の途中で何度もバトルをしてきたけど、グリーンは的確な判断をして攻撃、防御を使いこなして僕達を苦戦させにきた。これほど手汗を握る熱いバトルをさせてくれるのは互いを認めた合ったライバルだけだ。
そんなバトルに終わりを告げる一撃を与え−
僕はチャンピオンになった。

 それから数週間過ぎても挑戦者はあまり来なかった。理由はトキワジムのジムリーダーだったサカキがロケット団解散と同時に退職して不在になってしまったから。

「……そろそろ、かな」

僕が座ってるか、ピカチュウが寝てるぐらいしか使っていない椅子から立ち上がって、四天王のリーダーであるワタルの元へと向かった。
通路を通って部屋に入るとワタルは一瞬、意外そうな顔をした。

「どうした?何かあったか?」

「ワタル。僕、チャンピオンを辞める」

「何故だ?」

「ここに居ても挑戦者はあまり来ないし、僕はもっとポケモン達と強くなりたいから修行をしたい。ワタルならいい場所を知ってると思って」

「知ってるには知っているが……俺を倒し、チャンピオンになったグリーンも倒してトレーナーの頂点になったのにまだ上を目指すのか?別に悪い事ではないが、チャンピオンを辞めるほどの理由があるのか?」

「ジルチを守れるくらい強くなりたいし、グリーンは僕を越えようと鍛えているから負けてられない」

ワタルの疑問が次々と出ても僕はすぐに答えた。だけど、僕の返事に予想外の質問が飛んできた。

「ジルチ…?ホウエン出身で一時期マサラタウンに住んでた子のことか?」

「知ってるの?」

ワタルが彼女のことを知ってるのが意外だったから僕は驚いた。

「知ってるさ。少し前、母親のシズクと手紙のやり取りをしてて娘のことが書いてあったんだ。それに父親から何かあったらよろしくと言われている」

ジルチのお母さんは博士と同じでポケモンについて研究してる人だからワタルと繋がりがあっても普通だと思った。でも、ホウエンにいるお父さんとはどういう関係かまではわからなかった。

「そうなんだ。それで、ワタルが知ってる場所ってどこ?」

「すぐ近くにあるシロガネ山は環境が厳しく、そこに生息するポケモン達はその辺の野生ポケモンより遥かに強い。力試しがしたいなら行ってみるといい」

「そうする」

「まさか、レッド。ロケット団を壊滅させた理由がポケモンを粗末な扱いをしたり、周りに迷惑をかけていたからだけじゃないな?」

「………」

何かに気づいたワタルの核心を突くような言い方に僕は正直に話そうと思った。

「ロケット団がポケモンの技を使えるジルチを狙ってた」

「彼女の能力を知っているのか」

「うん。最初は神様からの授かり物って聞いてたけどサカキが言ったんだ。ジルチは特殊な力を持った人とポケモンの間に産まれた子だって」

「………」

そこまで話すとワタルはそれ以上言ってこなかった。話は終わったと思って教えてもらった場所へ向かおうと踵を返した途端、ワタルが大きな声を出した。

「待て、レッド!!君は事情を知っても何も思わないのか?そこまで彼女を想ってるのなら何故すぐにジョウトへ行かないんだ?」

「約束したから」

「約束?」

「リーグで会おうって。僕は約束通りチャンピオンになった。次はジルチがワタルを倒してチャンピオンになってから僕に挑むんだ」

本当はチャンピオンのままでも良かったけど、僕はもっとポケモン達と一緒に強くなりたかった。誰よりも強くなって、ジルチを守れるように…もしもの時、彼女と戦える覚悟と勇気があるよう鍛える必要があった。

「だから僕はジルチを待つんだ」

「…そうか。彼女について何かあったら連絡する。ロケット団が壊滅したとはいえ、油断はできないからな」

「うん」

チャンピオンの座を返し、帽子をかぶり直してリーグを去った。ワタルから教えてもらったシロガネ山へ向かう為にリザードンのボールを持った。

「リーグは約束の終着点で新たな出発点だ。ジルチ、早く来てほしいから頑張って」

僕達3人の約束は果たされてもずっとライバルのままで、ずっと競い合っていくんだ。
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