―トキワシティ・トキワジム
今日はレッドが洞窟から出てシロガネ山麓にあるポケセンへ来る日。ある意味珍しい日でもあるが、理由がグリーンからの食料配達の日だからだ。
「この間、ポケモンフードが足りないって文句言われたんだっけ…。」
大きいリュックにポケモンフードをいつもより多めに入れた。日持ちするタイプだから缶や箱タイプが多く、リュックが悲鳴を上げそうな重さになっていた。
「さてと、早く行かねぇとレッドの奴うるさいからな。」
グリーンは慣れた動作で重いリュックを背負った時にポケギアが鳴って、画面を見るとワタルからだった。一瞬、彼からの電話に疑問を抱いた。
「ワタルさんから電話なんて珍しい…。もしもし?」
[グリーン、緊急事態だ。ジルチがロケット団に拐われた!]
「何ぃっ!!?」
ワタルの言葉が衝撃的すぎて背負ったリュックを床に落とした。床が開くんじゃないかと思われる音が鳴って、ジムトレーナーが様子を見に来た。
[すぐにチョウジタウンの怪しいお土産屋に来てくれ!!レッドにも伝えてくれっ俺は先に向かう!]
「わかりました!……ジルチ、大丈夫かよ。」
「グリーンさん、何かあったんですか?」
「ちょっとな。コレと別件でジムを離れるから留守の間任せたぜ。」
「わかりました!」
ジムトレーナーは床にめり込んだリュックを見て苦笑いをするも、グリーンの深刻な表情を見てすぐに部屋を出た。
「レッドの奴に電話しねーと。」
電話帳で1番押した回数が少ないであろう人物に電話をかけた。シロガネ山の洞窟から下りていれば繋がるはずと思いながらグリーンはジムの窓から外へ出た。
「緊急事態だから出ろよ…?レッドを待ってる暇はねえから先に行くぜ。」
少し離れたジョウト地方のチョウジタウンへ向かうべく長年のパートナーのピジョットを出した。
―シロガネ山麓のポケセン
今日はグリーンが食料を持ってきてくれる日でレッドはポケセンで待っていた。最初はグリーンが山頂の洞窟まで届けてくれたが、ある日ポケギアを渡されてから麓のポケセンへ来いと言われるようになった。
「…グリーン遅い。」
ポケギアで日付がわかるようになって、気づけば3年ぐらいシロガネ山に籠っていた。誰にも負けないくらいもっと強くなろうと思ってずっとポケモンと共に修行していた。
『チャ〜』
ピカチュウを撫でながらグリーンを待っていると、ポケギアが鳴って驚いた。慣れない手つきで画面を見るとグリーンからの電話だった。
「もしもし?」
[レッドか!緊急事態だッ!!]
グリーンの声と一緒に聞こえる風を切る音が凄く、通話越しでも空の上をかなりの速さで飛んでいるのがわかる。
「何が?」
[ジルチがロケット団に拐われた!!]
「……?」
ロケット団は3年前に解散させたからグリーンが何を言ってるのかわからなかった。
「…は?ジルチがロケット団に?」
[あぁ!少し前からロケット団が活動を再開してるってのを聞いてて、それと同時にジルチのお母さんが殺された。さっきワタルさんからジルチがチョウジタウンで拐われたって連絡が来た!…とりあえず、チョウジタウンに怪しいお土産屋があるからそこへ向かって−]
「……許さない。」
レッドが解散させたロケット団が復活している。あの時、サカキにジルチを諦めろと言って承諾したのに3年経った今、彼女を拐った事に腹が立った。
「助けなきゃ。そしてロケット団を…もう1度壊滅させる。」
レッドは帽子を被り直し、すぐにポケセンを出てボールからリザードンを出した。
「いきなりでごめんだけど、ジルチを助けに行くから全速力でチョウジタウンまでお願い。」
レッドの顔を見てリザードンは力強く頷いた。長年のライバルでもあり、レッドにとって大切な人を助けにチョウジタウンへ向かった。
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