37.凶兆
 イーブイの様子を見てると気温や景色に反応してるような気がした。本当に寒い所に行ったら何かあるのかなと思った。

「さてさて、ポケセンでバクフーン達を治療して怒りの湖に行こうっと。」

「残念ですが、貴女の行き先は怒りの湖ではありませんよ。」

「っ!?」

後ろから聞き覚えのある声がして後ろを振り向くとスプレーをかけられた。

「げっほ!げほ…!お前、は…!!」

そこにはヤドンの井戸で会ったランスがいた。

「お久しぶりですね。ジルチ、お迎えに来ましたよ。」

「迎えって−」

突然、身体の力が抜けて地面に膝をついた。何が起こったのかわからず、手足が痺れて段々視界がボヤけてきたからランスを睨みつけた。

「虫ポケモンの眠り粉と痺れ粉を混ぜたスプレーです。騒がれては困りますからね。」

さっきかけられたスプレーに異常状態にさせる粉を混ぜたものだとは…このままではランスに捕まるのは確実だ。イーブイは私の敵だと認識してランスに威嚇している。

「また手持ちが増えたのですか…貴女のポケモンは攻撃と速さが高くて非常に厄介です。…イーブイは進化ポケモン、組織の実験に使うもありでしょう。」

ロケット団の実験だなんて命を粗末にするような事に決まっている。

「や…めろ…!」

イーブイを安全な場所…ヒビキ君の元へ行かせねばと思って、痺れながら必死に脱いだ帽子をイーブイに持たせた。

「イーブイっ!帽子を、持って…ヒビキ君の元へ…行って…はや、くっ!!」

イーブイは躊躇しながらも頷いて、帽子を持っていかりの湖の方角へ走っていったのを見て私は意識を手放した。

「…逃げられてしまいましたか。ちょっと冗談を言っただけで必死になりすぎですよ。……ん?」

ランスが下を見るとジルチは眠って地面に倒れていた。

「試作品とはいえ、このスプレーは効果がいまひとつのようですね。すぐに効かなかったら意味がありません。」

ランスは失敗作のスプレーを近くの茂みに投げ捨てた。

「さて、貴女はロケット団の…いえ、私の道具になってもらいますよ。…おや、怒ってますか?」

ジルチの腰にあるボールがカタカタと激しく揺れて今にでも飛び出しそうだったのを見たランスは、開閉スイッチをロックして勝手に飛び出さないようにした。

「このポケモン達はジルチが私の物になったら手駒にします。」

不気味な笑みを浮かべながらジルチを抱えて近くの建物へ連れていった。
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