33.助け合い
 嵐が過ぎ去るのを待たなきゃいけないからポケセンへ戻ろうと思って後ろを向くと真後ろにミナキさんがいた。

「ひっ!」

「君は焼けた塔でマツバと一緒にいた子…ジルチだったか?」

「そ、そうですよ。ミナキさん。」

「今の…スイクンじゃなかったか?ちょっとしか見えなかったが海の上をスイクンが走って行ったように見えたぜ……。」

確かにスイクンは海の上を走って行ったけど会話まで聞かれてないか少し気になった。

「スイクンは美しくて凛々しい。しかも物凄い速さで町や道を駆けめぐる。素晴らしい。私ももっと近くでスイクンを見てみたいのだが……。」

しまった。ミナキさんはスイクンマニアだった事を忘れてた。その場を離れようとミナキさんの横を通りすぎたら右腕を捕まれた。

「ッ!?」

「よし!トレーナーである君と戦って私もスイクンに認めてもらう。早速勝負だ!いくぞっジルチ!」

いきなりミナキさんに勝負を挑まれたけど全員ライボルトで返り討ちにした。マルマインがいつ爆発するかわからなくてヒヤヒヤした。

「凄いぜジルチ!スイクンが君の様子を伺っていたわけが少しわかった気がするよ……。とにかく私はこのままスイクンを探し続けてみる。」

「頑張ってください。」

「君とはまたどこかで会うかもしれないな。じゃあ!」

こんな嵐の中どこへ行くのだろうと思いつつミナキさんを見送った。今度こそポケセンへ…と思った時だった。

『お困りのようだな。ジルチ。』

振り向くとルギアが海から顔を出していた。

「嵐でアサギに戻れなくて困ってる。…ってルギア!スイクンが探してたよ!?」

『ん?スイクンが?まぁいい。アサギまで送ってやろう。』

「え?」

『さぁ乗るがいい。』

ルギアがアサギまで送ってくれるのはありがたい話で背中に乗ったのはいいけど、翼を軽く羽ばたいただけで民家を吹っ飛ばすと云われてたような。

「ルギア…羽ばたいたらタンバの民家吹っ飛びましたとかないよね?」

『……恐らく、な。』

「え、ちょっと待っ−」

『しっかり掴まってな!』

「うぁあっ!!」

ルギアは海上から一気に羽ばたいて暴風の中へ飛び出した。気になって後ろを振り向くと民家は無事だったけど瓦が何枚か飛ばされていた。
嵐の中ルギアが送ってくれたおかげで今日中にアサギへ戻ってこれた。港から少し離れた人がいない所に降ろしてもらった。

「嵐の中、送ってくれてありがとう!」

『ふむ、また会おうではないか。いつかスイクンと共に水の都を訪れる日を楽しみにしてよう。』

ルギアはそう言って海の中へ潜っていった。エンジュを訪れてから伝説のポケモン達と縁があるような気がする。
私は気にもしてなかったけど、彼らは普通に人の言葉を話していた。スイクンはその気になればと言ってたけど長年生きているからかもしれない。幼い頃から一緒にいるライボルトとは対話までできないけれど何を伝えたいのかわかる。その点は他の手持ちも同じ。

「さてと、アサギの灯台に行って秘伝の薬を渡しに行こう!」

灯台のエレベーターを上がってミカンさんとアカリちゃんのいる場所に着いた。

「ミカンさんお待たせしました。タンバの薬屋で貰った秘伝の薬です!」

「…その薬でアカリちゃん治せるのですか?」

「そのはずです。どうぞ。」

ミカンさんに秘伝の薬を渡した。ミカンさんの手を借りてアカリちゃんが秘伝の薬を飲んだ時、少し苦そうな顔をした。

「…………アカリちゃん具合はどう?」

『バルッ!バルルッ!』

アカリちゃんが元気に鳴くと辺りが眩しくなった。どうやら秘伝の薬が効いたようだ。

「…ああ、よかった。本当によかったです。ありがとうございます。貴女のおかげです。」

「どういたしまして。」

「…では、あたしジムに戻ります。」

アカリちゃんが元気になったのを見届けて、ミカンさんはジムへ戻ったからアサギジムに挑めるようになった。

「ジム行く前にポケセン寄って回復しなきゃね。」

灯台を出て上を見上げるとアカリちゃんが海を明るく照らしていた。港の方から「灯台のアカリちゃんが元気になった!!」と喜ぶ声が聞こえて嬉しくなった。
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