32.タンバジム
 風が窓を叩く音で目が覚めて部屋の時計を見ると11時を指していた。

「あー寝すぎたかも…。」

水を飲もうと思ってベッドから起き上がろうとしたら腕に激痛が走って悶絶した。

「いったいっ!!二の腕、痛すぎる…!筋肉痛、辛い!!」

昨日の移動で筋肉痛は覚悟をしていたけど本当に痛い。

「ゆっくり起き上がろう、動作もゆっくりと…。」

力を入れすぎないように起き上がって机に置いてたペットボトルを手にした。

「はぁ…我ながら情けないと思う。朝ごはん食べたらジム行こう。」

手短に朝食を済ませてジョーイさんから湿布を貰い、ポケセンを出ると空は灰色に染まって風が強かった。

「…今日アサギに戻れるか不安になってきた。」

帽子が吹き飛ばされないように手で押さえながらジムの扉を開けた。

「よっ!暴風の中でもやってくるとは流石だね。未来のチャンピオン!」

「嵐が来るのは知ってましたが…今日アサギに戻れるか気になりますね。はい、トレーナーカード。」

「そいつは無理かもしれないよ?タンバの漁師は船を出さないみたいだし、海にいるトレーナー達も帰ってきたぐらいだ。はい、ホウエンのジルチさんね。タンバジムへようこそ。頑張れよ!」

「嵐が過ぎ去るのを待つしかないかなぁ…。頑張ります!」

入ればすぐ目の前に滝に打たれながら座り込む筋肉質なおっさ…男性がいた。

「すみませーん!」

「…………。」

「ジムに挑みに来たのですがー!」

反応がない。滝の流れる音で声が聞こえてないかもしれない。

「おっチャレンジャーか!シジマさんは修行中だから滝を止めないと相手してくれないぞ!」

滝の近くにいた空手王の人が話しかけてきた。

「どうやったらあの滝止めれますか?」

「それは俺達を倒して上にある2つのスイッチを押せば止めれるぜ!!」

上を見上げるとスイッチがあるのを確認した。

「…ならばバトルっ!!」

「簡単に通させないぜ!!」

空手王4人の相手をマグマラシとライボルトでぱぱっと倒してスイッチを押した。滝の流れが止まったのを確認してから下に降りてシジマさんの元に向かった。

「おぉぉー!激しく流れ落ちる滝がわしの頭の上にズドドドド……ってコラー!」

「ひっ!?」

「勝手に水を止めるなー!わしの修行の邪魔をしおってー!言っとくがわしは強いぞ!こうやって毎日滝に打たれているからな!」

「修行の邪魔をしてすみません。ジム戦に挑みに来たのですが……私のポケモンがシジマさんと戦うのですか?」

私の隣にいるマグマラシは口から炎を出した。

「格闘ポケモンならともかく炎ポケモン相手は…。」

「……」

「…………」

お互いの間に少し気まずい沈黙が生まれた。

「では勝負といくかぁ!」

「挑むところ!」

いきなりシジマさんがボールを投げたことによってバトルが開始した。オコリザル相手にマグマラシで戦う事にした。

「マグマラシ、かえんぐるま!」

「やりおるな!オコリザル、かげぶんしんだぁ!!」

オコリザルはかえんぐるまが当たった後、素早くかげぶんしんをした。

「スピードスターで全員当てて!」

マグマラシのスピードスターはかげぶんしんで増えたオコリザルを当てていったけれど、本体になかなか当たらなくて焦ってきた。

「どれもかげぶんしん…!本体はどこにっ」

「今だ!きあいパンチだー!!」

オコリザルのかげぶんしんの後ろで本体のオコリザルがきあいパンチの構えをしてマグマラシを背後から殴りにきた。

「ニトロチャージ!」

きあいパンチとニトロチャージがぶつかり合い、お互い後ろへ飛ばされた。多少ダメージを受けたけどあの状態で避けきれず、大ダメージを受けるよりマシだろうと判断した。

「攻めていこう!かえんぐるま!!」

「わしらも攻めるぞ!もう1度きあいパンチ!!」

速さが上がったマグマラシのかえんぐるまが先に当たりきあいパンチが不発になった。

「スピードスター!!」

体勢を持ち直す間を与えまいと素早く指示を出して、オコリザルを倒した。

「まだまだ負けやせーん!」

次に出てきたのはニョロボンだった。水タイプの技を使われたらマグマラシは1発で倒れるかもしれない。

「マグマラシ、交代しよう!」

マグマラシは頷いてボールに戻った。相手がニョロボンなら出すポケモンは決まっている。

「ライボルト!」

「電気タイプであろうとワシらは負けはせん!!のしかかり!」

ニョロボンはライボルトに目掛けてのしかかろうと飛び上がった。

「避けてじゅうでん!!」

ライボルトが避けてニョロボンは水が貯まったフィールドに身体を打ちつけて水飛沫が上がった。

「お前のポケモンは動きが速いし攻撃力があるな!」

「それが私の育て方ですから!攻撃は最大の防御なりってね!!」

「おもしろい!ニョロボン、なみのりだ!」

フィールドを埋め尽くす幅のなみのりが押し寄せてくる。なかなか威力のありそうななみのりだったから笑みを浮かべた。

「いいなみのり…シャワーズなら喜んで飛び込みそう。ライボルト、かみなり。」

ライボルトは吠えると、なみのりを縦に割るほどの凄まじい威力のかみなりが落ちた。じゅうでん後のかみなりを受けたニョロボンは少し焦げて痺れながら倒れた。

「まだ…負、けた……。」

シジマさんもニョロボンと同じように大の字で倒れて水飛沫が上がったと思えば、むくりと起き上がってシジマさんがこっちに来た。

「うーむ。わしが負けるとは…こりゃ参った!よーしっ!このショックバッジはお前に相応しい!」

シジマさんからショックバッジを貰ってバッチケースにしまった。

「うむっ!ついでだ。こいつも持ってけ!わざマシン01の中身はきあいパンチ!!先に攻撃を受けるとこちらの攻撃が出せなくなるが当てられれば絶大な威力を発揮するぞ!」

「ありがとうございます!」

ジョウトのジムリーダーは勝ったら技マシンをくれるみたいだけどそういうルールがあるのだろうか…。

「わはは!わし楽しかったよ!でも負けは負けだからな。今日から24時間特訓だ!」

「24時間はやりすぎですよ…。」

わははは!と笑いながらいつの間にかスイッチを入れられて流れ出した滝の中へ突っ込んでいった。

「…では、失礼しました。」

ジムを出ると嵐が来たのか風がさらに強くなっていてすぐにでも雨が降りだしそうだった。

「ぬぅ……これは嵐が過ぎ去るまでタンバシティに滞在かな。…ん?」

何だか視線を感じると思えば町から離れた場所にスイクンがいた。どうしてタンバシティにいるのか気になってスイクンの元へ走った。

『巫女。ルギアに会われたのですね。』

「うん!でも、どうしてスイクンがタンバシティにいるの?」

『ルギアに会いに行ったら渦巻き島にいなかったので巫女なら何か知ってると思い、後を追いかけたのですが彼の行方を存じませんか?』

「いや…私も知らないよ?」

『彼は滅多な事がない限り渦巻き島を離れないのですが…どうしたのでしょうね。私はもう1度渦巻き島周辺を探してみます。』

「うん、わかった。もしルギアに会ったらスイクンが探してたって伝えとくよ?」

『お願いします。』

スイクンはお辞儀をして海の上を走っていった。 ルギアがいないのとこの嵐が何か関係があるのかなと思って灰色の空を見上げた。
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